シュクメルリ鍋定食はご飯に合うものをというこだわりのほかに、提供方法にも強いこだわりがある。 「チーズをトッピングしたがゆえに、ほかの料理と同じく厨房で温めたものを出すのか、それとも固形燃料を使って温かいものを出すのかは悩みましたね。いろいろ試行錯誤した結果、後者のほうがよりおいしく召し上がっていただけるということで、鍋定食として提供することになりました」 　松屋流のアレンジや提供方法は功を奏し、発売終了の時期には惜しむ声が多く寄せられたと明かす。こうしたファンの声を受けて、松屋ではレシピを公開するという初の試みも行われた。 「次のメニューも控えていたので、好評だから延長しますというのも難しくて……。ただ、お客さまの期待には何とかして応えたいと思っていたので、社内で検討を重ねて、お客さまご自身で作ってもらおうと、クックパッドに松屋公式のアカウントを作成し、シュクメルリのレシピを公開しました」 　松屋のシュクメルリの人気は衰えることを知らず、復刻メニュー総選挙では9商品の中から、2位に2000票もの差をつけて堂々の1位を獲得。約19万票のうち、シュクメルリは約5万票を獲得する人気ぶりで、2021年1月に復刻を遂げた。復刻版ではテイクアウト用のアルミ鍋を採用。自宅でもアツアツのシュクメルリ鍋が食べられるなど、さらなる改良が加えられていた。 「詳細はお伝えできかねますが、次回発売を目指して現在、“松屋世界紀行”シリーズの新メニューの開発を進めています。商品開発チームは、企画の人間を併せても約10人弱と多くありませんが、新メニューの開発や工場での大量生産の方法は3人の職人部隊を中心に行っています。お客さまがワクワクするようなおいしい料理をお届けしてまいりますので、ぜひご期待ください」 　気軽に海外旅行ができない昨今、料理を通して異国気分が味わえる松屋の存在はさらに求められ続けることになりそうだ。 ＜取材・文／黒田知道＞