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「妻は愛しいが頭が悪い。救ってあげねば」モラハラ加害者の心理を当人が振り返る

酒に酔っては、妻に暴言を吐いてしまっていた

MAX87

パワハラ、モラハラの加害者の精神世界について掘り下げた情報は少ない。そんな中、当事者だった人物がその反省から一つの団体を立ち上げるに至った

 厚生労働省の発表によると「いじめ・いやがらせ」に関する個別労働紛争の相談件数は年々増加の傾向にあり、2019年には過去最高を記録している。  その結果を踏まえてか、2020年6月には「パワハラ防止法」を実施。被害者救済と予防に乗り出した。しかし事態は収束するどころかパワハラ、モラハラなど既存のハラスメントに加えて、高学歴と頭のよさを駆使して部下を精神的に潰しては出世していく「クラッシャー上司」なるものの存在も明らかになり、問題は深刻化する一方だ。  そんな中、被害者側の声は有り余るほど目にするが、加害者の言い分についてはほとんど取り沙汰されたことはなかった。  えいなか氏はなぜ、日本ではまだ珍しいハラスメントの「加害者向け」の団体の起ち上げに至ったのか。それは自身もまた、ハラスメントの加害者だったからだ。 「被害者支援が非常に重要であること、いまだ十分でないことに議論の余地はありません。しかし、被害者の数だけ加害者がいます。加害者を野放しにすると、被害者は増え続けます。DV・モラハラの問題に取り組むにあたって、加害者側の変化を促すことも間違いなく重要です」  そう語るのは、DV・モラハラなどの加害者向けのオンライン当事者会やトレーニングを行う団体「GADHA(ガドハ)」の主宰であり、自身が経営するコンサルタント会社の代表でもある「えいなか」氏。    えいなか氏が、現在の妻と結婚したのはおよそ5年前。妻を愛し、幸せに暮らしていたつもりだったのだが……。 「仕事上でストレスがかかっては大量の酒を飲んで妻を怒鳴り、強い言葉で責めてしまう。いわゆる絡み酒というやつです。しかし翌日になるとすべて忘れていて、妻にだけ苦痛が残っている。そんな関係性に悩み、2018年頃から自発的にカウセリングへ通うようになりました」

「妻は愛しい存在だが頭が悪い。俺が救ってあげなければ」

 そんなえいなか氏、当初は自身のことを主にアルコール依存症なのではと疑っていたという。  しかし妻に話を聞くと「普段から話が通じないなと感じていた」と言うのだ。 「仕事の悩みを夫に相談をすると、夜中まで何時間もネチネチクドクドと説教をされたり、ケンカをすれば有無を言わさず一方的に責め続けられるのでよく泣いていましたね。もちろん私自身にも問題はあると思いますが、一緒に住んでいるのに自分の思いや考えを伝えられない関係をこの先ずっと続けていけるのか、本当に不安でした」(えいなか氏の妻)  ところがこれらの言動、えいなか氏の言い分としてはこうなる。 「妻は愚かゆえに、僕の言っていることが理解できないのだ。でも僕は妻をとても愛している。だから理解させてあげなければ……と思っていました」  正しく導いているはずなのに、妻はいつも泣いている。うつ症状も見え始め、仕事を辞めるとまで言い出した。 「自分では妻を慰めたり励ましたりしているつもりなのになぜ?と、ふと感じたことから、もしかして自分にも悪いところがあるのではないだろうか……という疑問が、ようやく浮かんできたんです」
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