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「妻は愛しいが頭が悪い。救ってあげねば」モラハラ加害者の心理を当人が振り返る

加害者側のほうがパートナーと別れたがらない傾向

 一般的に別離となった場合は加害者側のほうがパートナーと別れたがらない傾向が強いという。それはなぜなのか。 「加害者にとって、加害できる相手がいることはとてもハッピーだからです。加害する=自分の思い通りに相手に影響することができるということ。  そして、相手が苦しんでいる時に『自分は相手に何ができるだろうか』と考えないどころか、自分をケアしてくれないことへの苦しみを感じる。苦しんでいるのが、自分の加害のせいであってもです。恐ろしいことですよね。  これは僕自身がそうだったからこそわかります。嫌なことも腹の立つこともすべて相手のせい、自分は責任を取らずに自分が望むことを相手にやらせ、望まないことは相手にやらせない……ひどい言い方をすれば、加害者にとって相手はラブドール兼サンドバッグ兼お母さんなわけです」  相手に別居されても、自分の問題を自覚できずに「早く(好き勝手加害できていた)元のような関係性に戻りたい……」という相談者もいるというのだから、何をかいわんや、だ。

僕たちの世代で、不幸の連鎖を終わりにしたい

 さらには、そうした問題のある人のほとんどが同じような問題のある親に育てられていているという現実もある。 「僕自身も、能力さえ高ければ世間のルールを多少逸脱してもお咎めなしという育てられ方をしましたからね。これはもう代々続いている価値観。結局親の親もそうだったということになるわけです。  ある意味では親も被害者であり、加害者。自分も被害者であり、加害者。でもそれに気づくことのできた僕たちの世代で、この不幸の連鎖を終わりにしましょうとよく伝えています」  えいなか氏は現在、GADHAの加害者変容理論を構築・提唱している。そもそも人間とはどのような存在なのか、そのような存在にとって幸福、愛、配慮とはどのようなものかということを哲学的な議論から具体的なハウツーにつなげているという。  そして、なぜ人にやさしくしなければならないのか、やさしさと幸福はどう繋がるのかというところを追求したトレーニングを作成している。  ハラスメント加害者の当事者団体GADHAの画期的な活動に、今後も注目が集まりそうだ。 【えいなか】 経営コンサルタントとして組織開発と起業家支援等を行う傍ら、自らのパワハラ・モラハラ加害経験をもとに「GADHA」を立ち上げる。活動を通じて「悪意のない加害者」が少しでも変容するきっかけを提供し、自らも実践中。6月27日 「悪意のない加害者」オンライン当事者会を開催。詳しくはGADHAまで。ツイッター:@EiNaka_GADHA <取材・文・構成/和場まさみ 安宿緑>
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