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土地規制法から考える日本の「仮想敵国」とは?/自衛隊の“敵” 第1回 小笠原理恵

「国境の島」・対馬は昔から要衝だった

 さて、「自衛隊の“敵”」の最初のテーマは、国境の島「対馬」です。対馬は海路で福岡まで147km、韓国の釜山まで49.5km。空気が澄んだ晴天の日には朝鮮半島を肉眼で見ることができます。  歴史を振り返れば、蒙古軍の来襲「元寇」も始まりは対馬でした。日露戦争末期にバルチック艦隊を殲滅したのもこの対馬沖です。中国の海警法改正で尖閣諸島に注目が集まっていますが、対馬は何度も外敵を食い止めてきた最前線の島でした。  メディアの対馬への関心は薄らいでいるようですが、対馬には韓国資本による土地売買問題が横たわっています。コロナ禍で韓国人観光客の足はピタリと止まったことも対馬の話題が減った理由でしょう。  そんななか、今年の3月19日、防衛省統合幕僚監部が中国海軍の最新鋭ミサイル駆逐艦ら3隻が対馬海峡を通過して日本海に出たと発表がありました。対馬に対する中国の動きは無視することはできません。
自衛隊の“敵”第1回 小笠原理恵

豊砲台跡

自衛隊の“敵”第1回 小笠原理恵

豊砲台跡

 対馬は日露戦争前から東京要塞の次に整備され、大小さまざまな砲台跡が残っています。対馬北方に残る豊砲台は当時の日本で最大級の40cmカノン砲が設置され、戦前の日本は日本海側の最重要軍事拠点として対馬海峡で敵艦隊を迎え撃つつもりでした。対馬要塞は一度も攻撃されることなく終戦を迎えました。その強固な砲台跡を見れば、戦前の日本人が対馬を本気で防衛していたことがわかります。

長らく問題視されたきた自衛隊周辺の土地買収問題

 陸海空と3つ全自衛隊が対馬には揃っています。航空自衛隊はレーダーサイト、海上自衛隊も対馬海峡を通る艦船等の情報収集のための基地です。平時には海上保安庁と警察が治安維持を行いますが、陸上自衛隊対馬警備隊は小規模ながら狙撃班やゲリラ戦対応ができる精鋭が集まり、有事やテロ発生時には対馬防衛の中核となります。  2007年、海上自衛隊対馬防備隊本部の隣接地にあるリゾートホテルが韓国資本に買収されました。現地を見てきましたが、海上自衛隊対馬防衛隊本部の側面を通る道の奥にそのリゾートホテルがありました。自民党の「安全保障と土地法制に関する特命委員会」で産経新聞社編集委員・宮本雅史氏は同隊の隣接地約3000坪が島民名義で韓国資本に買収されていると報告しています。  この売買を規制する法律はなく、取引は合法です。防衛拠点周辺の土地売買を知りながら、国が先に買い取らなかったことも悔やまれます。
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空き家が目立つ陸上自衛隊対馬警備隊の隣接地
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