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意外と知らない「お盆」の意味。ご先祖様があの世から帰ってくる

「盆」という言葉の由来

 そもそも「盆」という言葉は、「盂蘭盆会(うらぼんえ)」という仏事に由来する。この行事の起源となったのは『盂蘭盆経(うらぼんきょう)』という仏教経典に書かれる話がもとになっている——。  釈迦十大弟子の目連(もくれん)が、 その神通力によって、母が死後に地獄のひとつである餓鬼道に落ちていることを知った。釈迦に母を救う方法を聞くと、周囲の僧に食べ物を施せば、一部が母の元にも届くという。目連はそれに従い、母を救うことができた。  これに基づき日本では1年に1度、先祖供養の行事が行われるようになったのである。  目連の施しを与える姿は「施餓鬼(せがき)」とも呼ばれ、盂蘭盆会と合わせて施餓鬼会も盆行事として行われている。

各地で行われる行事

・西馬音内(にしもない)の盆踊り 3大盆踊りのひとつと称される秋田県羽後町の西馬音内盆踊りは、「亡者踊り」とも呼ばれている。編み笠を深くかぶり、黒い頭巾で顔を隠し、亡くなった人を模して踊るのだ。幻想的な雰囲気を感じられる歴史ある盆踊りだ。 ・長崎の精霊流し 長崎県内の各地で行われる「精霊流し」は、遺族が故人の霊を弔うために手作りの精霊船を曳きながら街を歩く伝統行事。爆竹の破裂音が鳴り響き、この音には邪気を祓う「魔除け」の力があると考えられている。 提灯の明かりで灯された精霊船の行列は、夜遅くまで続く。 <監修/朝里樹、イラストレーター/ひじやともえ>
怪異妖怪愛好家・作家。1990年、北海道に生まれる。2014年、法政大学文学部卒業。日本文学専攻。現在公務員として働く傍ら、在野で怪異・妖怪の収集・研究を行う。著書に『日本現代怪異事典』『世界現代怪異事典』(笠間書院)、『日本のおかしな現代妖怪図鑑』(幻冬舎)がある。
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日本異界図典
私たちが生きる世界の向こう側にある見えない世界「異界」——。いにしえの人々は、人知を越えた存在を畏れ敬い、異界という世界を創り上げた。人々が異界を通し築き上げた文化や伝統、社会を解説していく。
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