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意外と知らない「正月」の意味。お年玉の由来は餅だった

 新年を祝う行事として賑わう「正月」。もともとは先祖の霊を呼び寄せて歳神様をもてなす行事だった。  そもそも人々にとって行事や祭りとは、神を敬い、死霊を恐れ、穢れや悪縁を祓うために行われるものが多かった。ここでは、その基本的なルーツを知ることで、いにしえから続く伝統と歴史の重みを感じてもらいたい。以降、朝里樹氏の著書『日本異界図典』(ジー・ビー)より一部を抜粋して紹介する。 【他の記事を読む】⇒シリーズ「行事」の一覧はこちらへどうぞ

ご先祖様の霊をもてなす「正月」

正月 正月行事は、原始的な日本の信仰を色濃く残している。その最大の目的は、祖先霊でもある「歳神様」を迎えることであった。  異界から来る歳神様を現世の自宅に迎えるための門が「門松」である。 最近は一般の家ではあまり見かけなくなったが、かつては年末に山に行き、松の木を伐って持ち帰り飾っていた。

門松は神を迎える目印

 門松の起源は、平安時代の宮廷儀式の「小松引き」とされている。新年の最初の日に、小さな松の木を引き抜いて持ち帰るという儀式である。長寿を願って行われたもので、持ち帰った松は玄関に飾られた。  門松といえば3本の竹が目立つが、実は松が本体である。松は1年を通して変わらず緑の色彩を保つことから長寿の象徴とも考えられ、「祀る」と「松」を重ね合わせおめでたい樹とされた。神様が宿り憑く「依代」として用いられたのである。  また、長寿を象徴する植物として知られる竹は、室町時代になって加わり、現代にまで続いている。玄関に飾られている門松には、ご先祖様を呼び寄せ、同時に異界と現世を隔てる結界の役割もある。
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「鏡餅」の意味
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怪異妖怪愛好家・作家。1990年、北海道に生まれる。2014年、法政大学文学部卒業。日本文学専攻。現在公務員として働く傍ら、在野で怪異・妖怪の収集・研究を行う。著書に『日本現代怪異事典』『世界現代怪異事典』(笠間書院)、『日本のおかしな現代妖怪図鑑』(幻冬舎)がある。

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