吉田、酒井、遠藤。サッカー五輪代表「オーバーエイジ枠」3選手の責任と葛藤
一体誰のための何のための大会なのか
賛否両論の意思表示で得られたものが
さらに、かけがえない自身の経験談を用いて、未来を見据えた社会的意義を説いている。 「僕が2002年の(日韓)ワールドカップで経験したように、時差がなくオンタイムで試合を見られるというのはものすごく感動と衝撃を受けます。そのために五輪を招致したのだと思います。ソーシャルワーカーの方々が毎日命を懸けて戦っていることは理解していますし、僕らは五輪がなくならなかっただけで感謝しなければならない立場なのも理解しています。ただ、選手たちも毎日命を懸けて人生を懸けて戦っているからこそ、この場に立てていることを忘れないでほしい。マイナー競技で五輪に懸けている人はもっといます。家族もそうです。自分の五輪に出る姿ならリスクを背負ってでも見たい人はいるでしょう。家族もいろいろなものを犠牲にして我慢して、僕たちをサポートしてくれています。選手だけでなく家族も戦っている一員なのです。その人たちが見られない大会とは、誰のため何のための大会だろうというクエスチョンがあります。ですから、真剣にもう一度検討していただきたいと思います」 この意思表示は賛否両論を呼んでいるが、同じアスリートたちからは賛同する意見が多数となっている。同じく男子サッカーで出場するU-24日本代表の堂安律もSNSを通じてキャプテンの主張を後押しした。 残念ながら今回は最良の結果を生み出すことはできなかったが、これもマネージメント術のひとつと言えそうだ。吉田麻也本人は決して狙っておらず本心のみを口にしたのだろうが、組織のために力になると感じたサポーターの声援を欲してトップに対して主張した。要求した力は得られなかったが、リスクを承知のうえで矢面に立ち主張したことで思わぬ副産物を得た。それは、組織の結束だ。組織を代表して意思を示したことで組織に属する者たちからの賛同と信頼を勝ち取った。思うような結果は得られなかったが、それで得た力は本大会で効果を表して本当に臨むメダル獲得という結果をもたらす助力となることだろう。 本大会期間中も、このようなオーバーエイジ枠の選手によるリーダーシップが見られることだろう。組織に属する方々も彼らの一挙手一投足を見て学べるものがあるはずだ。 <取材・文/川原宏樹> スポーツライター。日本最大級だったサッカーの有料メディアを有するIT企業で、コンテンツ制作を行いスポーツ業界と関わり始める。そのなかで有名海外クラブとのビジネス立ち上げなどに関わる。その後サッカー専門誌「ストライカーDX」編集部を経て、独立。現在はサッカーを中心にスポーツコンテンツ制作に携わる
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