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日テレ・栗原甚プロデューサーが描くバラエティ番組の未来像「制約の厳しさがアイデアに」

大晦日恒例、あの番組の誕生秘話

――栗原さんは『踊る!さんま御殿』も関わっていましたよね。視聴者としても、あの番組って演出はどうしているんだろうと思ったことがあります。 栗原:『踊る!さんま御殿』は番組タイトル通り、さんま師匠の独演会を毎週見るような番組で、個人的にも大好きな番組です。僕が演出の1人として関わっていた時は「テーマ」を考えるのとゲストのキャスティングはしますが、さんま師匠との打ち合わせは、ほんの数分でした。  さんま師匠がスタジオに来て、大勢のゲストに会ってしゃべりまくる。カンペもありませんし、フロアDも指示を出しません。さんま師匠がチラッと腕時計を見て、そろそろ終わろうかなという感じで収録が終わるという、誰にもマネできない華麗なる収録です。 ――さんまさんと初対面のゲストも多いようですが。 栗原:さんま師匠は、苦手な人がいないんですよ。どんな人でも面白くしてしまう。

「笑ってはいけない」は松本人志と中居正広の打ち合わせから発展

――栗原さんの番組で、個人的に印象深いのが2002年の秋と翌年の春に放送された特番『松本人志・中居正広VS日本テレビ』です。 栗原:あの特番の半年前に、中居くんとレギュラー番組をはじめたんです。収録の前後に、よく楽屋で「松本さんと一緒に何か面白いことをやりたい」って話をしていて……。  中居くんはその頃、松本さんとのエピソードをよく話してたんですよ。その後「松本さんと一緒に何か特番をやれないか」という話に発展して、松本さんもOKしてくださって…。 ――2人にひたすら「ドッキリ」を仕掛ける番組でしたね。 栗原:番組をやろうってなった時に、『電波少年』でおなじみの土屋さんが「もう枠は用意したから」と言ってきて!当時、土屋さんは編成部長で、日テレのタイムテーブルを決める決定権を持っていたんです。  それから毎週、松本さんと中居くん、土屋さんと僕の4人がホテルのスイートルームで企画会議をすることに……。雑談したり近況を話したりしながら、何をやったら面白いかずっと話してましたね。  それである時、お茶をこぼしてしまって、その時に「あ!」って声が出て。松本さんが「人間って、『あ!』って言うよね」という話題に変換してくれて…僕が「『あ!』って言ってはいけない」っていう企画を思いついて提案したんです。 ――それで、2人をドッキリにかけて「あ!」を言わせにかかったんですね(笑) 栗原:そうです。あの特番を2回放送して、しばらくしてからダウンタウンの番組を担当している放送作家の高須さんから連絡が来たんです。「あの企画、やってもいい?」って。  僕は「どうぞどうぞ」と返答したら、『ガキ使』で「絶対笑ってはいけない温泉宿一泊二日の旅」(2003年、日本テレビ)が放送されて、その3年後、大晦日恒例の「笑ってはいけない」シリーズがスタートしたんです。  そう、あの『笑ってはいけない』は、さかのぼると松本人志と中居正広の2人が打ち合わせをしたホテルの一室から誕生したのである。
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バラエティ番組とコンプライアンス
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Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。

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