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日テレ・栗原甚プロデューサーが描くバラエティ番組の未来像「制約の厳しさがアイデアに」

コロナ禍で見えてきた「リモート出演」の可能性

栗原甚

ビジネス書の著者でもある栗原甚氏

――他業種の例に漏れず、テレビ業界もコロナの影響はありますよね。 栗原:ありますが、良い影響もありました。これまではキャスティングしようとしても「その日は東京にいない」とNGになっていた売れっ子のタレントも、リモート出演であればブッキングが成功したり、他局の番組の出演直後にウチ(日本テレビ)の生放送にも出演できるようになったり、「場所」も「時間」も超えられるようになりました。 ――リモートは「どこでもドア」のようですね。 栗原:日本は、まだまだ甘いですよ。ヨーロッパのテレビ制作の方と話す機会があったんですけど、向こうはロックダウン(都市封鎖)の間、司会者も制作スタッフも技術スタッフも自宅から出られない。  それでもまったく諦めないで、放送するための方法がないかを試行錯誤したんです。その結果、関係者全員が「完全リモート」で、自宅から自分の担当業務を全うしてサッカーの生中継とかを放送できているんです。  これは凄いことですよね。さっき言った通り、制約と条件が厳しいと人間は知恵を出すんですよ。実は、これが実現できたのは理由がもう一つあるんですが……。 ――テクノロジーの発達ですか? 栗原:ヨーロッパは5Gエリアが広がっていたので、高速で大容量のデータ通信が可能なんです。  だからカメラマンも音声さんもスイッチャーさんも司会者も、自宅にテレビ放送のクオリティを保てるレベルの「機材」を各自用意することによって、生中継まで可能になったんです。これって凄いことで、5Gだから実現したスキームですよね。  ワイヤレスの無人カメラを、遠方の自宅からリモート操作で動かすには、5Gの電波がきちんと整備されていなければ、できなかったんですよ。

これからのバラエティ

――コンプラ・ネット動画の台頭・コロナ禍など、バラエティを取り巻く環境は厳しさを増しているようにも見えますが、未来への展望を聞かせてください。 栗原:シニアの可能性は無限大ですよ。例えば、この春まで『新・日本男児と中居』というレギュラー番組をやっていたんですけど、中居くんが「若者文化を学ぶ」という内容でした。  ですが、今度ウチで放送される特番『中居ウエンツとアウトエイジ』(10月3日放送)は「シニア」に注目した番組です。クオリティの高いコスプレをSNSで発信していたら人気者になって、海外のイベントに招待されるようになった71歳のコスプレイヤーとか、海外の大会で上位入賞した64歳のダンサーとか。 ――「高齢なのに」ではなく、正面切ってスゴイですね。 栗原:これを企画したのは、入社4年目の若いディレクターなんですよ。日本はもう3割くらい高齢者ですし、これからどんどん増えていきますから、シニア層にこんなに面白いネタが眠っているとは思いませんでした(笑)  さまざまな困難があるようにも思えるテレビのバラエティ界。しかし、それを支えて来た栗原プロデューサーは、制約と条件の厳しさがアイデアの糧になると話す。私たちが思うより、日本バラエティの未来は明るいのかもしれない。 栗原 甚 日本テレビ 演出・プロデューサー 『さんま&SMAP』『伊東家の食卓』『ぐるナイ』『行列のできる法律相談所』『踊る!さんま御殿』など数多くの人気バラエティー番組を手がける。特に企画・総合演出・プロデュースした伝説の深夜番組『¥マネーの虎』は海外へフォーマット販売され、イギリス版『Dragons’Den』(BBC)を皮切りに世界184の国と地域で放送中。アメリカ版『SHARK TANK』(ABC)は【エミー賞】(CREATIVE ARTS EMMY AWARDS)のリアリティ番組部門で「最優秀作品賞」を2014年から4年連続受賞。最近では国民的ギャグ漫画『天才バカボン』をそっくりすぎる豪華キャストで実写ドラマ化し、大ヒットさせたことでも有名。中居正広をはじめタレントからの信頼も厚く、毎回、独創的かつ常識破りの企画で、テレビの枠に留まらずメディアを超えてCreativityを発揮している仕掛け人。著書に『すごい準備 誰でもできるけど、誰もやっていない成功のコツ!』(アスコム刊)がある 取材・文/Mr.tsubaking
Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。
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