日テレ・栗原甚プロデューサーが描くバラエティ番組の未来像「制約の厳しさがアイデアに」
BPO(放送倫理・番組向上機構)は「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」を審議の対象にすることを決めた。これを受けてネット上では、バラエティ番組の変容を危惧する声が上がった。さらに終わりの見えないコロナ禍や、Youtubeなど動画配信サービスの隆盛で、多難に見えるテレビ業界。その現在と未来について、数々のヒット番組に関わってきた日本テレビの演出・プロデューサー栗原甚さんに話を伺った。
――この10月で、人気番組『¥マネーの虎』の放送開始から20年になるそうですが、あの番組は、どんなコンセプトではじまったんでしょうか。
栗原:日テレの社内で、数年ぶりに新番組の企画募集があったのがきっかけです。募集枠は土曜の深夜だったので、予算も本当に少なくて……まずは予算をどう切り詰めれば面白い企画になるか、逆算して企画を考えましたね。
――それで、タレントではなく一般人が主役にしたと。
栗原:テレビを見ながらどこを削れるかを考えて「タレントさんはギャラが必要……タレントをなしにできないか」と考えました。それからスタジオセットを建てるのにも予算が必要なので、スタジオセットもいらないって……。
――今では、タレントなしスタジオセットなしの番組はありますが、その走りとも言えますね。一般人の夢やビジネスモデルにお金を出す、社長の方達にはギャラは出してたんでしょうか。
栗原:社長もノーギャラですよ。交通費も宿泊費も払っていません。とにかく予算が少ないという制約の中で「面白いものを作ること」だけを考えてました(笑)。
――そこに、司会者として吉田栄作さんが芸能人として1人だけ入っていましたね。なぜ吉田栄作さんだったんでしょうか。
栗原:司会者ではなく「見届け人」という名の立会人なんです。彼は人気絶頂の時に一度、日本の芸能界から離れて、ハリウッド映画に挑戦しに行きました。そのまま芸能界にいれば人生安泰だったはずなのに、それを捨ててでもやりたいことに飛び込んだ。それが、夢をプレゼンする志願者の気持ちを理解できるサポート役としてピッタリだと思ったんです。
――今も続いていたら、前澤友作さんなどが出てきて面白そうですね。
栗原:当時は、ホリエモンも出てくる前でしたからね。でもあの後、40カ国以上で各国版が制作されてまして、今も世界184の国と地域で放送されているんですよ。
アメリカでは『SHARK TANK』というタイトルで放送されていて、(テレビ界最高の栄誉と言われる)「エミー賞」のリアリティ番組部門で最優秀作品賞を4年連続で受賞しました。
『¥マネーの虎』からちょうど20年
唯一の芸能人、吉田栄作の意味と今なら出そうな社長
Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。
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