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コロナ後の世界経済はどう変わる? インフレを恐れない政治は吉か凶か

どんどん消えていく都心のオフィス

オフィスビル・東京

写真はイメージです

これまで既得権として存在していたビジネスが、何の努力もなく惰性で続くことはあり得ません。コロナのような経済的なショックがあると淘汰は加速します。都心の飲食店が潰れて、以前は絶対でなかったような物件が出始めました。同様に、大企業が自社ビル売却、本社機能縮小、リモートワーク拡充に舵を切って、以前では考えられなかった一等地のビルにも空室が目立ち始めました。極端な例では淡路島に拠点を作って社員を千数百人単位で移動させようとしているパソナや別府市に拠点を作って移住を進める富士通のような会社もあります。 2021年9月の東京都心のオフィスの空室率は約6%で、19か月連続で上昇しました。NHKは「新型コロナウイルスの感染拡大に伴うテレワークの普及などで企業がオフィスを解約する動きが続いています」と報じています。

東京を出て、近くの地方へと移住する人々

また、東京都の人口動態にも大きな変化が起こっています。2021年9月の住民基本台帳人口移動報告によると、東京都は転出者数が転入者数を3533人上回り、5か月連続の転出超過。東京都は2020年5月以降ずっと転出超過で、例外は就職や入学シーズンの3〜4月だけという状態が続いています。東京から転出する人は、周辺の神奈川、千葉、埼玉などに流入しているようで、逆にこれらの地域の人口は微増しています。 1980年代に社会科の教科書に出ていた「ドーナツ化現象」が再来しているわけです。さらに国の政策もこの現象を追認し、むしろ助長するような方向です。2021年10月に行われた衆院選において自民党は以下のような公約を掲げています。 ◆地方創生 ○企業の本社機能等の地方への分散を進めるとともに、地方拠点強化税制の活用や〝企業版ふるさと納税〞の活用等により地方への資金の流れを加速させ、東京・首都圏に集中する社会機能を地方に分散させた〝分散型国づくり〞を進めます。 ○大都市への過度な集中を是正し、わが国全体の強靱性を高めるため、地方創生の中核的な役割を果たしている地域の経済団体や大学等との連携を強化するとともに、DX等の新技術を活かした〝人を惹きつける魅力ある地域づくり〞を推進します。 パンデミックが終息しても、この流れが止まることはないでしょう。実際にやってみて今の生活、仕事のやり方のほうが効率的だと気付いてしまった人は多い。敢えて以前の非効率な形に戻すインセンティブがありません。現場のミクロなレベルで考えてみても、もう私たちのライフスタイルは変わってしまって、元には戻れなくなっているという現実を頭に入れておきましょう。皆さんが転職や起業を考える際も、すでに変わってしまった世の中を前提にプランを組み立てる必要があります。
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世界各国の政府はインフレを恐れなくなった
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1969年、東京都生まれ。経済評論家。中央大学法学部法律学科卒業。在学中は創立1901年の弁論部・辞達学会に所属。日本長期信用銀行、臨海セミナーを経て独立。2007年、経済評論家・勝間和代氏と株式会社「監査と分析」を設立。取締役・共同事業パートナーに就任(現在は代表取締役)。2010年、米国イェール大学経済学部の浜田宏一名誉教授に師事し、薫陶を受ける。リフレ派の論客として、著書多数。テレビ、ラジオなどで活躍中

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