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何の意図もなく「五輪字幕問題」を起こしてしまうNHKの希薄さ

ジャーナリストとしての良心をぶつけ合っているか

撮影イメージ 全国放送も地方局の放送も、変わりはないという。 「地方だ全中(全国放送)だというのは、これからなくなります。なぜかというと、『NHKプラス』(総合テレビやEテレの番組を放送後7日間視聴できるサイト)でこれから随時、いつでもどこでもあなたの出身地、あなたの興味あるニュースや番組を見られるようにということで拡大していきます。  4月以降、『NHKプラス』はテレビ画面でも見られるようにするという改革も行います。そういう中で、地域ニュースや番組も全て全中です。今はローカルも全中もなくなった。デジタルコンテンツは世界を巡っていろいろな批評にさらされるんだっていう意識をみんなが持つことが必要です」  最後に再発防止には、一人ひとりのジャーナリズム精神が大切だと締めくくっている。 「今回なぜあんなことが起きたのか、あのシーンを使う必要があったのか、わからないという意見も出ました。私もまったく同じです。番組を作る過程で風通しの良い雰囲気で皆がジャーナリストとしての良心をぶつけ合った議論を交わしているか、一人ひとり、NHKに入ってくる全員がジャーナリストの良心を持ってこの仕事をしていると信じています。  そういう一人ひとりのジャーナリズムに関わる人間が自分の良心を持って意見を交わして試写をしているのか、番組制作にあたっているのか、根本を今一度見直す必要があります。取材対象に謙虚で真摯な姿勢を持つことが大事です」 取材イメージ 正籬副会長は政治部出身。大阪で政治担当デスクを務めたことがあり、その時私は大阪府警担当キャップだったから、個人的にもよく知っている。本音で迫るタイプだ。なんの裏もなくこれほどの大問題を引き起こしてしまう意識の希薄さに、危機感を募らせているのだろう。  もちろん出席者からも厳しい質問が容赦なく相次ぎ、山内昌彦人事局長が説明にあたった。どんな質問にどう答えたのか? 出席した管理職たちは説明をどう受け止めたのか? 今回の調査に欠けているものは何か? NHKは視聴者にどのように説明するべきか?  こうした点については、発売中の『週刊文春』の特大ワイド・スクープ表彰台の記事「NHK五輪字幕捏造説明会で露呈した”深刻すぎる危機”」で詳しく記したので、あわせてご覧いただきたい。 文/相澤冬樹
無所属記者。1987年にNHKに入局、大阪放送局の記者として森友報道に関するスクープを連発。2018年にNHKを退職。著書に『真実をつかむ 調べて聞いて書く技術』(角川新書)『メディアの闇 「安倍官邸 VS.NHK」森友取材全真相』(文春文庫)、共著書に『私は真実が知りたい 夫が遺書で告発「森友」改ざんはなぜ?』(文藝春秋)など
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