石丸伸二氏はなぜ蓮舫氏に勝ったのか?都知事選で激的に変わった“戦い方”
7月7日の東京都知事選挙で、最大のサプライズとなった石丸伸二氏の2位躍進。「石丸ショック」はなぜ起きたのか。今後に何をもたらすのか。ジャーナリスト・相澤冬樹氏に寄稿してもらった(以下、敬称略)。
「今、石丸さんをモデルにした映画を作ってるんだよね」
石丸とはもちろん、7月7日投開票の東京都知事選挙で2位に躍進した石丸伸二・前広島県安芸高田市長のこと。だが、この話を耳にしたのは投票日の4日前、まだ結末がどうなるかわかっていない時だ。
明かしたのは映画プロデューサーの奥山和由。『ハチ公物語』『その男、凶暴につき』『地雷を踏んだらサヨウナラ』など数々の作品で知られる。石丸をモデルにした舞台を観て「これは映画でもイケる」と直感したという。
「現在進行形の政治がブラックユーモアあふれるエンタテインメントとして見事に成立していた。これをベースにフィクションとして構成すれば、人間と政治を深掘りする映画になると確信したよ」
タイトルは『掟』。今年3月に企画を立ち上げると、5月に石丸が都知事選への立候補を表明。まさに現在進行形でドラマが進む。選挙の投票終了直後に制作を公表、そして8月30日に一般公開。映画制作の常識を覆すスピード感だ。
「この企画はタイミングが命。政治への問題意識が芽生える時を外したら意味ないでしょ」
映画『ブレードランナー』を思わせる、風俗店のネオン輝く新橋の路地裏。屋外に設けられた居酒屋の席で生ビールを傾けながら奥山は熱く語った。
「石丸さん、勢いあるでしょ。ネットですごい人気だから、彼が伸びれば映画にも勢いがつくと期待してるんだ。もしかして小池知事をしのいで当選なんてことだってありうるんじゃない?」
私はそれに水を差した。
「さすがにそれはないでしょう。それにネットで人気でも票になるとは限りませんよ。ネットで応援している人たちが投票所に足を運んで投票用紙に『石丸』と名前を書いてくれるか? そこに壁があるんです。5年前の参院選でも、れいわ新選組はネットですごく注目されましたが、ふたを開ければ2議席しか取れずに山本太郎が落選しましたからね」
れいわ新選組は、この選挙から導入された特定枠を使い2人の候補が優先的に当選できるようにしていた。3議席を取れれば山本が当選できるはずだったが届かなかった。
「確かにれいわはあの時思ったほど伸びなかったね。でも今回、石丸さんはキョンキョン(俳優・歌手の小泉今日子)も応援してるし」
「それは勘違いです。キョンキョンは蓮舫を応援してますよ」
スマホでXを開き、株式会社明後日(小泉の会社)の投稿を示す私。
「そうなんだ。石丸さん、厳しいかなあ」
フィクションのような現実
「ネットでウケても票にならない」が、今までの常識だった
無所属記者。1987年にNHKに入局、大阪放送局の記者として森友報道に関するスクープを連発。2018年にNHKを退職。著書に『真実をつかむ 調べて聞いて書く技術』(角川新書)、『メディアの闇 「安倍官邸 VS.NHK」森友取材全真相』(文春文庫)、共著書に『私は真実が知りたい 夫が遺書で告発「森友」改ざんはなぜ?』(文藝春秋)など
記事一覧へ
記事一覧へ
この記者は、他にもこんな記事を書いています
ハッシュタグ