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藤井風、五輪映画のテーマ曲は“黒歴史”に?ファンの期待とは真逆の方向へ

藤井風ファンは複雑な心境?

 
藤井風

藤井風2ndアルバム『LOVE ALL SERVE ALL』

 そういうわけで、藤井風のファンは複雑な思いを抱いているのですね。 “腹蹴り”が報じられる前から“河瀨直美と組むのはちょっとなぁ”といった声があがり、なかには“ファンやめといてよかった”なんて声も。報道後には藤井風にとっての“黒歴史”というツイートまで見られたのです。  ゆるりとした人となりや、スムーズでメロウな曲調、寛容と多様性を賛美した歌詞が、河瀨直美氏の思想やメンタリティとは相容れないと映っているのでしょう。  加えて、いわくつきの東京五輪に関わる藤井風に対する落胆。河瀨直美と東京五輪という組み合わせに、拒否反応を起こしているように思われます。

著名人に向かう「キャンセルカルチャー」とは?

 こうして社会通念上好ましくないとされる出来事が起きた時、著名人を襲うのがキャンセルカルチャーと呼ばれるものです。  主に欧米で見られる現象で、不買や、出演する番組、映像作品などからの降板を求める運動を起こし、道徳的な正義を守ろうする運動のことですね。ふつうは問題ある言動を起こした当人に向けられます。  たとえば、人気番組『エレンの部屋』の司会者、エレン・デジェネレスは、パンデミック中の自宅豪邸での隔離生活を“ムショ暮らし”とジョークを飛ばしたところ大炎上。そこからスタッフに対する過去のパワハラや給料未払いなどが指摘される事態に発展し、番組は2022年に終了することが発表されました。  また『ハリー・ポッター』シリーズの作者、JKローリングもトランスジェンダーに対して否定的な発言をしたことがファンからの反感を買いました。映画に出演する俳優陣たちからもローリングと一緒に写真に収まらないといったリアクションを起こされ、排斥の対象となってしまったのです。  これに対して、河瀨氏の一件では嫌気が本人ではなく藤井風に向かっているのが興味深い点です。当人への批判はさておき、藤井風を守りたいという老婆心。なるべく事を荒立てずに済ませる道を探る、ということでしょうか。遠回しで日本的ですね。
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心のモヤモヤを晴らすために「石を投げる」
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音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。Twitter: @TakayukiIshigu4

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