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給料は上がらないのに食料品の値上げは続く。円安でさらに進む懸念

食料・資源輸入国の日本、黒田総裁が円安継続宣言でさらに輸入コストが上昇

輸出入 そもそも日本は食料自給率が低い国だ。2020年度の食料自給率はカロリーベースで37%と過去最低を記録した18年度と同水準に落ち込んだ。  大まかにいって日本人は食料の6割を輸入に頼っていることになるため、今回のロシアによるウクライナ侵攻といった非常事態が発生し国際秩序が乱れた場合、すぐに食料品価格が高騰するリスクが非常に高い。  小麦に関しては、ウクライナは世界第3位の生産国のため、今回の侵攻による被害で国際価格が上昇することになった。直近でも第2位のインドが国内価格の上昇を受けて禁輸措置を発表したため、さらに価格が高騰した。これを受け、日本でもパン製品などの価格上昇が見込まれる。  日本の場合、食料や原油の輸入価格を引き上げているのは、日本政府・日銀が金融緩和による円安政策をアベノミクス以来継続している要因も大きい。日銀の黒田東彦総裁は先月末の金融政策決定会合で「全体として円安がプラスという考え方を変えたわけではない」と大規模緩和の継続を明言している。  ただ、欧米諸国がインフレ抑制のために政策金利の引き上げに動く中、「マイナス金利政策の日本との金利差がひらけばますます円が売られ、1ドル=150円の大台も全く不思議ではない」(国内証券アナリスト)とする声も少なくない。  円安が日本の消費者を苦しめる局面はしばらく続きそうだ。

中小企業で給与にシワ寄せも。購買力が弱れば節約志向が強まる悪循環

 日本人の給料が上がらず、購買力が低下することも懸念される。  日銀が16日に発表した4月の国内企業物価指数(速報値)は前年同月比10.0%上昇した。企業間で取引されるモノの価格動向を示すこの統計が明らかにしたのは、製造工程が川上から川下に移るにつれて価格転嫁が進んでいないことだった。  素材メーカーなどの川上の大手企業は取引先企業に原材料の価格高騰分を転嫁することが比較的容易だが、川下の部品メーカーや加工メーカーなどでは顧客や取引先を失うことへの懸念などにより、「価格転嫁をお願いしにくい」ことが基本的な要因と推察される。 「この状況が続けば経営体力のない中小企業の給与が上がらず、コロナ禍による不況で強まった節約志向に拍車がかかり、日本経済はますます勢いを失う」(前出アナリスト)
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フリージャーナリスト。食の安全保障、証券市場をはじめ、幅広い分野をカバー。Twitterアカウントは、@eiyatt.takeya
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