ライフ

「もう海外旅行は余裕」ってホント?PCR検査にまつわるトラブルが多発中

 海外旅行の出入国規制が6月から緩和される。コロナ禍で長らく行きたくても行けない状況だっただけに心待ちにしている人も多いと思われるが、PCR検査での陰性証明書などに「落とし穴」があることを忘れてはいけない。
旅行

写真はイメージです。以下同(Photo by Adobe Stock)

 ここ1か月の間に海外渡航した人たちに注意点や実際に起こったトラブルについて取材した。

検査だけで最低1万6000円!? 高額な「陰性証明書」

「え! PCR検査ってこんなに高かったっけ? 街中で無料で受けられるのに」――。  海外旅行に行く人は、まずこう驚くことだろう。ハワイやバリなどといった日本人に馴染みの深い観光スポットがある国や地域を旅行するためには、入国の24〜72時間前のPCR検査で英文陰性証明書を取得することが条件となっている。  この検査、一度の費用が最低でも1万6000円程度する。休日対応、検査結果が数時間で出る「特急対応」が加われば、高いところでは4万円を超えるケースもあるという。  日本全国では今年に入って街に「PCR検査」の無料検査所が乱立しているが、なぜこれほど開きがあるのか? 以下は検査業者の話。 「日本では唾液での検査が一般的ですが、日本人に人気の東南アジアや欧米は鼻の奥に綿棒を入れホジホジと体液を採取する方式の国がほとんど。そのため、日本でそちらの方式で検査をしようとすると、国からの補助も出ずロットも捌けないので圧倒的に割高になってしまうというわけです」  実際、勘違いして日本で唾液検査を受け、空港の航空会社のカウンターでの搭乗手続きの際に指摘され、飛行機に乗れないままスゴスゴと引き返したケースもあるといい、出国時の落とし穴であることは間違いない。

海外の「日本語対応病院」には“ぼったくり”も。情弱、英語力がない人間はカモられる

 さらに、日本への帰国時にも出国前72時間以内にPCR検査を受けなければならないが、こちらにもトラップは隠されている。  旅行会社が全てアテンドする団体旅行の場合はともかく、個人旅行の場合は現地での病院探しが必要となるが、こちらが玉石混交。現地語はおろか、英語ですら馴染みの浅い日本人旅行者の多くには非常に難易度が高い。  実際にゴールデンウィークにベトナムに旅行した30代自営業のAさんはこう話す。 「ホー・チ・ミンから日本に帰国するために検査を受けようと思い、『PCR English』などとググったのですが、色々それっぽい病院は出てくるものの、外国人の海外渡航向けのページがスッと出てこない。それで、ホームページに記載されている病院に電話してみたのですが、お互い英語ネイティブではないため、意思疎通からして不可能で電話を切られました。  なんとか予約フォーマットがある病院を見つけたのですが、なんと自分のVISAのクレジットカードがシステムエラーで決済できず、八方塞がりに。最終的にはホテルのスタッフにある病院を説得してもらい、ことなきを得ましたが、帰国するだけでこれほど緊張感がある旅行は初めてでしたね」(Aさん)  このように病院探しや予約することすら難しいケースは少なくないと思われるが、いわゆる情弱で英語力のない日本人旅行者が最後に頼るのが「日本語対応の病院」である。だが、そこでカネをむしりとられるパターンもあるという。  4月末に東南アジア数カ国を旅行した40代会社員のBさんはこう話す。 「病院探しの時に日本語で『PCR検査 帰国』などと現地で検索すると、さまざまな『日本語対応可能』の病院が出てくるのですが、ここでは相場の3倍以上取られます。具体的には現地病院では2000円〜3000円で済むところが1万円〜1万2000円かかります。少し日本語ができるスタッフがいるというだけなのに、あまりに高い。これでは弱みに漬け込んだ“ぼったくり”と思われても仕方ありません」(Bさん)  ただ、実際には背に腹はかえられないということで検査を受けてしまう人もおり、団体旅行では日本語対応の病院で検査することがあらかじめ決まっているケースもある。出入国時の検査が平均で合計4万円かかると言われるが、高額化にはこうした背景もあると考えられる。
次のページ
政府指定のPCR検査「所定フォーマット」で混乱
1
2
フリージャーナリスト。食の安全保障、証券市場をはじめ、幅広い分野をカバー。Twitterアカウントは、@eiyatt.takeya
記事一覧へ
おすすめ記事
ハッシュタグ