性犯罪事件の「難しさ」。加害者は“知人”が多い、“性的同意”の認識にズレも
いまや世界的にも大きな社会的問題に発展している性犯罪。国内でも映画業界をはじめ、告発が相次いだ。被害状況が明らかになったことで、必要な施策の検討や相談体制の拡充などが急がれている。
ルポ性暴力』(鉄人社)の著者である諸岡宏樹氏に、性犯罪事件を取り巻く実態などを語ってもらった。
――2018年の『男と女の性犯罪実録調査』(鉄人文庫)は『週刊実話』(日本ジャーナル出版)の同名タイトルの連載を文庫化し、新旧の男と女の性にまつわる事件を収録した本でしたが、本書もインパクトのあるタイトルですね。
諸岡:ちょうど本書の原稿を書き終えたくらいから映画業界などの問題が噴出し、タイミングがあまりに良すぎるタイトルになりました。今回は言わば『男と女の性犯罪実録調査』スペシャル版のようなかたちで、過去に取り上げた事件の“その後”を徹底的に取材して掘り下げた内容です。
性犯罪は再犯率も高いので、より長い時間軸でルポできないかとずっと構想していて、昨年、追加で取材した15の事件から10本を選んでまとめました。性犯罪の取材は非常に難しく、うまくいかないことも少なくありません。今回はうまくいった取材が多かったと手応えを感じています。
――性犯罪事件を取材する難しさとは?
諸岡:事件取材にもさまざまある中で、“最も配慮が必要な事件”というところですね。取材対象者の方にも希望者には予定稿をお見せしましたが、当時を思い出して(フラッシュバックして)鬱状態になる方もいて。性犯罪は“魂の殺人”と言われますが、日常生活に支障がないような方でも、「語ると精神の根っこから疲れる」とおっしゃいます。
――諸岡さんは事件取材を中心に、週刊誌などで別名義でも活動されているとのことですが、性犯罪に注力するようになったのはなぜですか。
諸岡:仕事である大きな事件の公判を傍聴した時、偶然その隣でレイプ事件の公判をやっていて、それを見たのがきっかけです。28歳のおじが姪っ子と小学校3年生の時から3年半にわたって性的関係を持った挙句、妊娠させた事件だったんです。
――小学校のトイレで破水して、帝王切開で子どもを産んだ事件ですよね……。
諸岡:その公判を見て、本当に背筋が凍る思いでしたし、ひとつ屋根の下で他の家族も気がつかないような隠された世界を取材できないものかなと。それが2007年から『週刊実話』の連載を始めた動機です。
今回は、20年以上にわたり日本の性犯罪に関する取材を続けるノンフィクションライターで、『
性犯罪事件の「その後」に迫る
最も取材に配慮が必要、被害者は「精神の根っこから疲れる」
1988年生まれ道東出身、大学でミニコミ誌や商業誌のライターに。SPA! やサイゾー、キャリコネニュース、マイナビニュース、東洋経済オンラインなどでも執筆中。いろんな識者のお話をうかがったり、イベントにお邪魔したりするのが好き。毎月1日どこかで誰かと何かしら映画を観て飲む集会を開催。X(旧Twitter):@tsuitachiii
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『ルポ性暴力』 本書は、事件の公判記録や関係者への取材を通じて、報道からは伺い知れない性暴力の実態に迫ったルポルタージュである。また、事件の「その後」も可能な限り追いかけた。被害者が当時のトラウマを抱え、報道による二次被害などにも苦しめられているのに対し、加害者は……。性暴力の被害者と加害者が抱える深い闇。 |
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