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猫もだまされる猫ゲー『Stray』はなぜ大ブレイクしたのか?

SNS映えする“単純さ”と“ひっかかり”

Stray

『Stray』のわかりやすいゲーム説明が掲載されているPlaystation Storeサイト

 今やゲームがヒットするにはSNSでの口コミも欠かせない条件となっています。『Stray』も配信されるやTwitterでトレンド入りし、TikTokでも「#straygame」は高い再生数を記録しました。  TwitterもTikTokもバズるには単純明快な“つかみ”が必要。それが先程挙げたリアルな猫らしい仕草になるわけですが、それだけでは盛り上がりは一瞬で終わってしまうでしょう。単純明快さのなかに、なにかしらの“ひっかかり”があることもポイントです。それが、『Stray』の場合は退廃したサイバーシティというSFの舞台。  廃墟のような路地を猫が歩いているスクリーンショットは、猫のかわいさとともに舞台の不穏さを強調します。もし『Stray』が単純に普通の民家や街を探索するゲームだったとしたら、ここまで見るものを惹きつけなかったかもしれません。アジア的な雰囲気を漂わせる廃墟風味の怪しいネオン街はそもそも萌えの要素を持っています。それと猫の萌えが相性良く組み合わさり、ロマンの塊となりました。

世界的な猫ブームも背景に!?

 また、『Stray』のヒットの背景には、世界的な猫ブームもありそうです。日本では2015年頃からペット市場で猫が人気となり、今では犬の飼育数を逆転。ペットフード協会によると、2021年の推計飼育数は犬は710万6千匹に対し、猫が894万6千匹。関連グッズも盛況で経済効果はおよそ2兆円規模にのぼるとの試算があります。  また、中国では都市部の若者たちを中心にペットブームが過熱し、2020年には犬と猫を合計して1億1000万匹に及んだという報道もありました。欧米でも10年ほど前から日本式の猫カフェが広がり始め、さらにコロナ禍によって猫を飼うことが身近になっているようです。世界中に猫ファンが多い割には、リアル系猫ゲームが珍しかったというのも『Stray』の追い風になったのではないでしょうか。
おにゃんこTOWN

母猫が子猫を探して街を歩く初期の猫ゲーム『おにゃんこTOWN』

 このコラムを書くにあたり過去の猫ゲームを振り返ってみました。猫が主人公のアクションは、女子小学生に人気だった『おにゃんこTOWN』(1985年/ポニー)、名作アニメ映画をゲーム化した『長靴をはいた猫 世界一周80日大冒険』(1986年/東映動画)、子猫チャトランの冒険を描く映画がヒットした『子猫物語』(1986年/ポニー)などファミコン期には複数存在していました。『Stray』は猫好きも納得の進化した猫ゲーム。猫ゲームの歴史に名前を残すことは間違いないでしょう。<文/卯月 鮎> (c)2022 BlueTwelve Studio Ltd. Published by Annapurna Interactive under exclusive license. All rights reserved. Annapurna Interactive Privacy Policy & EULA
ゲーム雑誌・アニメ雑誌の編集を経て独立。ゲーム紹介やコラム、書評を中心にフリーで活動している。雑誌連載をまとめた著作『はじめてのファミコン~なつかしゲーム子ども実験室~』(マイクロマガジン社)はゲーム実況の先駆けという声も
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