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長渕剛の“愛国心”はどこから生まれたのか?“貧しさ”を歌っていた時代からの変化

国を憂う思いは「いつかの少年」の反動か


 ここまで、“外国人から土地を守れ”発言につながる道筋を振り返ってみました。すると、いま国を憂う思いは「いつかの少年」の反動なのではないか、とも思うわけです。  アメリカのソングライター、ランディ・ニューマンの「Follow The Flag」という曲があります。アンセム風の荘厳な曲調で、偉大な国旗に自らを投影する人達の心象を歌っています。あえて感動的なハーモニーにすることで、国旗に入れ込む心理を皮肉っているのですね。 <みんなそんなものはただの絵空事だと言う  何の意味もないし 嘘っぱちだなんて言うやつもいる  でもそれは違う 俺は死ぬまで国旗に従属するんだ> (筆者訳)

「日本人の美しい気持ち」とは一体なんなのか

 誤解のないようにしておくと、決して国旗の存在や国旗を振ることが悪いのではありません。けれども、なぜ国家や旗を通して気高さや美しい心根を証明しなければならないのでしょうか? 「日本人の美しい気持ち」でひとつになって外国人から国土を守ろう。確かに勇気ある呼びかけです。  一方で、その大志の出どころを考えると、ふと立ち止まりたい気もするのです。 文/石黒隆之
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。Twitter: @TakayukiIshigu4
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