仕事

「転職を怖がる人」の心を縛る“ちっぽけな自尊心”という呪い/猫山課長

「転職しない奴はバカ」の真意とは

 今の会社で給料が上がらないのなら、転職という選択肢が出てきます。しかし、世の中にはどんどん転職できる人と、「転職は怖い」と足を踏み出せない人がいます。  SNSでは、ビジネス系インフルエンサーが「転職しない奴はバカ」との主張をしているのを見かけますが、これをインプレッション集めの過激発言とは切り捨てられません。  現在、そしてこれからの日本は大変な労働者不足が懸念されており、国は外国人雇用やDXの推進による生産性の向上等で穴埋めをしていく姿勢が見えます。  そんな中、能力が高い従業員の価値はこれまで以上に上がっていくことになります。人の奪い合いが当たり前の世界がやってくる。  ビジネスインフルエンサーは、自分の価値がわからず、今の会社を世界のすべてだと思って縮こまっている人物を指差して「お前はバカか」と言っています。しかし、彼らの本当のメッセージは「立ち上がれ。世界を見ろ」なのです。  とはいえ、転職には勇気が必要です。まず、転職しても今の所得が維持できるかわからない。転職で年収が上がった話は聞くものの、自分がそうなれるかは誰も保証してくれません。

転職にネガティブになる人の本音

 それ以上に大きいのは、自分が何をできるかを明示できないことでしょう。「あなたは、何ができますか?」と言われた時に、明確に提示できるものがない。  日本の会社はタコツボ組織になりがちで、自社でしか通用しない人材を輩出しやすくなっています。というか、自社での立ち回りを意識していればそれなりの立場につけるから「自分の市場価値」など気にする必要がなかったのです。  自分を客観視し、数値化して示すことができない。その訓練をしてきていない。それが転職における大きな心理的ハードルとなります。  一方で、転職を繰り返して所得を上げている人もいます。彼らは自分の価値を明確にプレゼンし、アピールし、相手に「採用する価値がある」と判断させることに成功している。  そんな連中は簡単に「給料上げたければ転職すればいい」と言い放ちますが、そもそも、そこに至る人生が違いすぎる。転職の議論が両極端になりがちなのは、これまで人生を「駆け抜けてきた人」と「惰性で歩いてきた人」との意見が全然噛み合わないからでしょう。  加えて転職ネガティブ派は、これまで自分を客観的に査定し、来るべき転職時代に向けて行動を起こさなかった自分の怠慢さを指摘されていると感じて、否定的な発言をします。  自分が安易に流されてきたことを認めたくない。認めたら、自分の人生を否定することになる。そんなみっともない自己愛から、自分を転職から遠ざけるのです。
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生き延びるための2つの方法
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金融機関勤務の現役課長、46歳。本業に勤しみながら「半径5mの見え方を変えるnote作家」として執筆活動を行い、SNSで人気に。所属先金融機関では社員初の副業許可をとりつけ、不動産投資の会社も経営している。noteの投稿以外に音声プラットフォーム「voicy」でも配信を開始。初著書『銀行マンの凄すぎる掟 ―クソ環境サバイバル術』が発売中。Xアカウント (@nekoyamamanager

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