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消えたヤンキーブランド「ガルフィー」人気再燃のワケ。“黒歴史”を強みに――2022年トップ10

2022年、日刊SPA!で反響の大きかった記事からジャンル別にトップ10を発表。「ファッション」部門の第7位は、こちら!(集計期間は2022年1月~11月まで。初公開日2022年4月28日 価格等は取材時の状況。現在販売していない商品もあります)  *  *  *  若者たちが闊歩する東京都内の繁華街。すれ違う女の子の洋服を思わず二度見してしまう。あの“犬のマーク”って、もしかして……!?
ガルフィー

かつてヤンキー御用達ブランドとして知られていたが、現在は若い女の子にも人気のガルフィー。画像は、ガルフィーのInstagram(@galfy.jp)より

 90年代後半から2000年代前半まで、“怖そうなヤンキーが着ている服”として悪名を轟かせていたブランド「ガルフィー」。だが、時代が大きく移り変わるなかで、いつの間にか姿を消していた。
ガルフィー

画像は、ガルフィーのInstagram(@galfy.jp)より

 それが今、どうやら一部の若者たちの間で再び流行しているらしい。果たしてガルフィーには、何が起こっているのか。人気再燃の理由を探るべく、ガルフィーを展開する株式会社ク・ラッチのデザイナー、石川りんさんに話を聞いた。

爆発的な大ヒットを記録するが暴対法改正に伴い下火に

ガルフィー

画像は、ガルフィーのInstagram(@galfy.jp)より

 1996年に名古屋でスタートし、とくに関西や九州エリアなどで爆発的な支持を獲得。現在の本社ビル(名古屋市北区)は、当時のガルフィーの売り上げで建てられたものだという。 「ブランド設立当初はヴェルサーチェのジャージ(セットアップ)が流行っていて。ほかにはキャプテンサンタやアーノルド パーマーが人気で、とにかくファッションにおいては“ロゴマーク”が重要な時期だったんです。それにやんちゃな感じを掛け合わせて誕生したのではないか、というふうに聞いています。その頃のデザイナーはもう会社には残っておらず、正確な真意としてはわかりませんが」  身近で親しみやすい犬のロゴマーク、そして手頃な価格帯とキャッチーなデザイン。ガルフィーは瞬く間に浸透していき、悪そうな人がだいたい着ているブランドに成長。しかし、暴力団対策法が2008年、2012年と改正され、“いかにも悪そうなファッション”は下火になっていく。 「やっぱり、そういう格好をしていると警察の職質(職務質問)対象になってしまうじゃないですか。それで、そのスジの人たちの間では、見た目では一般人と変わらないようにスーツなどが好まれるようになった。どんどん売り上げが落ちていき、ほぼゼロに。私が入社する2017年までの5年間は、ブランドとしては休止していたんですよ

入社後に「犬のマーク、なんか見たことがあるぞ……」

ベースボールキャップ

ストリート系を意識したベースボールキャップも展開

 そんなガルフィーを再生させた石川さん。現在38歳。デザイナーとしての原点はなんだったのか——。
ガルフィー

画像は、ガルフィーのInstagram(@galfy.jp)より

 専門学校のスタイリスト学科を卒業後、22歳で原宿のストリート系ショップ店員になった。 「めちゃくちゃ生意気な若造だったんですが、上の人から『なんで売れないんだ?』って怒られたときに『(商品が)ダサいから』と答えて(笑)。以降、自分がデザインしたロゴのTシャツを提案させてもらうようになったんです。アパレルの学校を出ていましたが、あんまり勉強はしていなかったので、グラフィックとかは独学なんです。バカ売れはせずとも、ぼちぼち売れました」  しかし結局、勤めていたショップがストリート系の低迷に伴い閉店することに。その後はOEMの会社で別注商品などの企画、スポーツウェアの会社でデザインに携わるなどしていたが、2017年に現在の株式会社ク・ラッチに入社した。その頃、ガルフィーの展開はストップしていたが……。 「私が入社する少し前にサノバチーズというイケてるブランドからガルフィーに別注が入ったみたいで。『どう思う?』って意見を聞かれたときに、“犬のマーク、なんか見たことがあるぞ……”って気付いて。  ただ、直感なんですが、絶対に良くなると思ったんです。それで自分がやることになったのですが、20代の頃のストリートマインドを呼び覚ましてつくりましたね。大きく売れたわけではないんですが、“この路線ならばもう一度やってもいいんじゃない?”って空気が社内でも出てきた。ちょうど、若者たちの間でストリート系の人気が再燃しつつあった頃なので、タイミングも良かったのかもしれません」
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木下優樹菜をモデルに起用
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明治大学商学部卒業後、金融機関を経て、渋谷系ファッション雑誌『men’s egg』編集部員に。その後はフリーランスとして様々な雑誌や書籍・ムック・Webメディアで経験を積み、現在は紙・Webを問わない“二刀流”の編集記者。若者カルチャーから社会問題、芸能人などのエンタメ系まで幅広く取材する。X(旧Twitter):@FujiiAtsutoshi

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