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消えたヤンキーブランド「ガルフィー」人気再燃のワケ。“黒歴史”を強みに――2022年トップ10

「その店にガルフィーがお客さんを集めてあげたい」


 ノリと勢いでここまできたように思えるが、その裏には使命感もあるという。 「ガルフィーは“唯一無二のブランド”という自負がある。その店に来るお客さんに向けてつくっているのではなく、あくまで、その店に人を集めたいと思っているんです。ドン・キホーテとコラボした際は、プロモーションもこちらで請け負って。ラッパーやお笑い芸人に出演してもらってMV(ミュージックビデオ)を制作したのですが、かなりバズって洋服も記録的な大ヒットを飛ばした。  今後は、たとえばマルイ系ブランド(細身でスタイリッシュなデザイン)とコラボしてみたい。アパレル業界のなかでも苦戦を強いられているジャンルなので、若者たちが来るような仕掛けをいっしょに考えたいですね。おこがましいかもしれませんが。基本的には、逆境からチャレンジしたいという思いがあります。  アパレル業界は今、全体としても厳しい状況にあって、若い子で目指そうという人も減ってきている。だからこそ、自分の世代(30代後半)がどんどん盛り上げて、希望がもてるようにしたいと思っていますね」

現在は“地雷系”にも人気「彼女たちは“黒歴史”をわかって買っている」

 ブランドとしては、若者向けに大きく方向転換。ストリート系はもちろん、ギャルや地雷系と呼ばれる層にも着用されている。 「もともと好きだったヒップホップやストリートカルチャーの最新トレンドをディグる(探す)かたちなので、ここまでの道のりで“なにか苦労した”という感覚はありません。自然な流れで楽しみながらやっていますね。ただ、昔ながらのガルフィー (※石川さんは『オールドガルフィー』と呼ぶ)が良いという人もいるので、そこは大事にして。バランスを見ながら取り入れていきます。  最初は当然、ストリート系のお客さんが目立っていました。その後は不思議なことに、だんだんと“病み(闇)”を抱えているような地雷系の女の子たちも着るようになって。彼女たちはガルフィーがヤンキーブランドだった過去を知らずに買っているわけではなく、“黒歴史”として捉え、それをわかったうえで、あえて選んでいる。  SNSにガルフィーを着用した写真をアップすれば承認欲求も満たせるし、少しは心の拠り所になれているのかなって。だから、クラスの人気者が着るようなマス向けもありつつ、“陰”のデザインもつくっていますね」
オールドガルフィー

ヒョウ柄を取り入れたド派手なセットアップ

 ファッションの流行は一般的に20年周期で繰り返すと言われているが、石川さんは「ヤンキーという黒歴史がジャンルや世代を超えてぜんぶをつないでくれた」と感慨深く語る。 ガルフィー ガルフィーは原宿ど真ん中のセレクトショップで売られている一方、地方の商店街でおじいちゃんおばあちゃんが経営しているような店にも置いてある。その状況が、今のガルフィーを象徴しているだろう。 <取材・文・撮影(展示会)/藤井厚年>
明治大学商学部卒業後、金融機関を経て、渋谷系ファッション雑誌『men’s egg』編集部員に。その後はフリーランスとして様々な雑誌や書籍・ムック・Webメディアで経験を積み、現在は紙・Webを問わない“二刀流”の編集記者。若者カルチャーから社会問題、芸能人などのエンタメ系まで幅広く取材する。X(旧Twitter):@FujiiAtsutoshi
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