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プロ野球への新たな登竜門となるか「ジャパンウィンターリーグ」が沖縄で初開催中

 毎年12月は野球シーズンのオフだと決め込んでいる人は多いだろう。しかし今、日本では初開催となる『ジャパンウィンターリーグ』が、11月24日から12月25日の1カ月間、沖縄で開催されている。 ジャパンウィンターリーグ

社会人選手、高校球児、外国人選手が鎬を削る

 プロ、アマを含めてシーズンオフの12月以降での本格的なリーグ開催は日本初。参加する目的は、それぞれのカテゴリーによっても異なってくる。社会人チームに所属する若手選手ならばオフシーズンにレベルアップを図る場であるほか、プロのスカウトも多数訪れるため、プロを目指す選手らにとってはトライアウトの場として位置付けられる。  正直、この試みが野球人たちに幅広く認知されているとは言い難い。メディアに取り上げられる機会は少なく、縦割り行政並みの構造の野球界において、海のものとも山のものともわからない初開催のリーグに対し、まずは様子見している形なのであろう。  初年度の参加プレーヤーはアマチュアのみ。リーグ開催にはメジャー、NPB、独立リーグ、社会人のスカウトも賛同し、22試合分の選手の評価を定量化(スタッツ、トラッキングシステムでの数値データ、動画解析)することにより、沖縄で連日開催されているこのリーグの選手をリモートでスカウティングができるシステムを導入するなど、新時代のトライアウトを形成している。

「プロでもアマチュアでもない”第3のコミュニティ”をつくりたい」

 運営する株式会社ジャパンリーグ鷲崎一誠代表が、開催目的について熱く語ってくれた。 「一般的に『ウィンターリーグ』といえば、11月からのオフシーズンにプエルトルコやドミニカといった中南米やオーストラリア、台湾などの温暖な地域で行われる海外のリーグを指し、過去にはNPB球団も若手選手を中心に毎年派遣してきた経緯があります。それとは別に、誰でも参加できるアメリカ国内で行われるトライアウトリーグというものもあります。今回、日本初の試みとして我々が目的としているのは後者です。プロでもアマチュアでもない“第3のコミュニティー”をつくることで、陽の目を浴びていない選手に光を当てる場、そしてプレイヤーとしての野球人生を完全燃焼できる場になるようにと、日本初のウィンターリーグを沖縄で開催しています」  副代表には、浦添商業から亜細亜大学、社会人エナジックでピッチャーとして活躍した知花真斗、GMには’90、’91年と2年連続で沖縄水産高校を甲子園準優勝に導いた立役者であり、九州共立大から巨人へ行った沖縄のレジェンド、大野倫が就任している。大野がGMとして、ウィンターリーグの本来の意義を説明する。
ジャパンウィンターリーグ

ジャパンウィンターリーグのGMを務める大野倫氏

「日本の場合、中学を卒業する15歳、高校を卒業する18歳、大学を卒業する22歳で進路の選択肢が求められ、そこで野球人生の道筋がおおかた決まってしまう場合が多い。高校3年間、大学4年間で選択した道から外れてしまったら、野球をやめるしかなかったのが、’05年からは独立リーグという受け皿ができた。でも実際は、運営状況がギリギリで採用枠も少ない独立リーグに元プロも参戦し、競争が激化していて、多くの野球選手がプレーを披露するチャンスが少なくなってきている。そういう選手たちに救済の場というか、きちんと実戦の場を提供してあげることこそ、ウィンターリーグの大義名分でもあると考えております」
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初年度の今年は70人の選手が参加するも……
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1968年生まれ。岐阜県出身。琉球大学卒。出版社勤務を経て2009年8月より沖縄在住。最新刊は『92歳、広岡達朗の正体』。著書に『確執と信念 スジを通した男たち』(扶桑社)、『第二の人生で勝ち組になる 前職:プロ野球選手』(KADOKAWA)、『まかちょーけ 興南 甲子園優勝春夏連覇のその後』、『偏差値70の甲子園 ―僕たちは文武両道で東大を目指す―』、映画化にもなった『沖縄を変えた男 栽弘義 ―高校野球に捧げた生涯』、『偏差値70からの甲子園 ―僕たちは野球も学業も頂点を目指す―』、(ともに集英社文庫)、『善と悪 江夏豊ラストメッセージ』、『最後の黄金世代 遠藤保仁』、『史上最速の甲子園 創志学園野球部の奇跡』『沖縄のおさんぽ』(ともにKADOKAWA)、『マウンドに散った天才投手』(講談社+α文庫)、『永遠の一球 ―甲子園優勝投手のその後―』(河出書房新社)などがある。

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