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高齢者に人気の仕事「マンション管理人」の思わぬ落とし穴

マンション管理人を目指すシニアの思わぬ落とし穴

マンション 清掃

写真はイメージです

 こうして見ると、マンション管理人の仕事はシニアにうってつけで、まさに理想の職種のようにも思える。では、どこにデメリットがあるのだろうか?  実はこのメリットと人気こそが、大きなデメリットを生み出している。つまり、人気がありすぎて倍率が高い。ある程度、長く勤められるため、空き枠も出にくくマンションの数以上に増員が必要にもならない。  なかにはワークシェアリングのように一人あたりの勤務を少なくして大勢の管理人を雇用するケースもあるが、多くの会社はあまり大勢を雇いたがらない。求人が出るのは欠員時や管理会社が変わった場合などだ。  もし、同じマンションで頻繁に管理人の募集が出るケースがあれば、それは逆に要注意となるだろう。マンション管理人という職業での大きなデメリットであり、退職理由にもなる「入居者からのクレーム」が予想される。  よく、マンション管理人は「コミュニケーション力が求められる」、「会話が好きな人に向いている」などの話があるが、実際には販売スタッフほどの会話・コミュニケーションは発生しない。しかし、クレーム発生時の深刻さは販売スタッフの比ではない。店舗の顧客と違い、短時間では終わらず、ずっとその入居者と向き合わなければならない。つまり、逃げ場がなく大きな負担となることがあるのだ。  そのほかに管理会社や物件によって点検内容や報告などの回数、その方法も異なるため、同じマンション管理人でも負担の大きい職場と勤めやすい職場とがあるのは致し方ない。頻繁に管理人の募集が出るマンションや管理会社の場合、こうした大変な職場の可能性も高くなると言える。例えば、土日祝日勤務の有無や、住み込みの有無などの違いも出てくる。  また、総じてマンション管理人の給与は低く、シニアはさらに低くなりやすい。勤務時間も常駐待機を含めて長くなりがちで、職場によっては仕事量が多いこともあり、いくら体力を使わなくともそのわりには給与が低いと感じるケースもあるだろう。

70、80代とも競合。60代では若すぎる?

 最近は実際に管理人となる人がさらに高齢化している点も、これからマンション管理人への転職を考える人が注意したい点だ。  体力や特別なスキルを必要とせず、長く働けることから、元気であれば70~80代でも働ける職種であり、そうすると、60代前半などでは空きが回ってこない場合も出てくる。  例えば、マンション管理人の仕事を地域のシルバー人材センターが斡旋していることもある。シルバー人材センターの多くは原則60歳以上から活用できるが、ボリュームゾーンは65〜80歳。体力を使わず安全なため、より年配の人物が優先的に決まってしまうかもしれない。  私たちが別の職種の人材を紹介した不動産会社では、実際にマンション管理人や清掃員については私たちのような人材紹介サービスを使わず、シルバー人材センターから人材の斡旋を受けていると話していた。  もし、これから老後を迎えた時にマンション管理人として過ごしたいと考えている人がいるなら、60代ではすんなり就職することが難しい可能性があることや、ほかにもシニアの希望者が多くいるかもしれないことを覚えておいてほしい。  また、「マンション管理士」、「マンション管理員検定」、「管理業務主任者」といった資格があれば多少就職が有利になる可能性はあるが、もともとが未経験歓迎も多い職種であり、資格があっても決定打とはならないことも就活の際、忘れずにいてほしいものだ。
50代以上のシニアに特化した転職支援を提供する「シニアジョブ」代表取締役。大学在学中に仲間を募り、シニアジョブの前身となる会社を設立。2014年8月、シニアジョブ設立。当初はIT会社を設立したが、シニア転職の難しさを目の当たりにし、シニアの支援をライフワークとすることを誓う。シニアの転職・キャリアプラン、シニア採用等のテーマで連載・寄稿中
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