更新日:2023年02月18日 10:15
仕事

専業主婦が子連れで海外移住。苦難の連続、現地でパラレルキャリアを実現するまで

子供たちが苦しむ姿に涙「連れてきたのは間違いだったんだろうか?」

ウィーン大学

ウィーン大学構内にて

 子供たちにとってもウィーン生活の始まりは楽ではなかった。  長女は最初の2か月くらいは毎日、家でも学校でも朝から晩まで泣いていた。それを見かねた担任の先生が、プライベートの携帯で電話をくれたこともあったという。 「子供が泣いている姿を見るのは本当にツラかったです。そんなときに、自分だっていっぱいいっぱいのなかで、なんて言って慰めればいいのかわからなかったんです。“連れてきたのは間違いだったんだろうか?”と考えることもあって、一緒に泣いていましたね」  当時、長女のクラスにとても親切にしてくれた子供がいた。その子も前年にポーランドから移住してきたのだった。 「自分も苦労しているから、小さいなりに人の痛みが分かるんだなって思いました」  一方、長男は最初の半年間、幼稚園で一言も話さなかったという。 「心の支えになったのは、幼稚園の先生からの報告でした。『彼(長男)は話さなくても、色んなことをよく分かっているし、先生の指示をきちんと聞いて、いつも一番に動いていますよ』って」  そんな言葉を聞いて、希望を繋ぐことができたという。  幼稚園で自分も大変な思いをしているにもかかわらず、家では泣き続ける姉に「大丈夫だよ」「お姉ちゃん、すごいよ」と声を掛けることもあった。まだ5歳の長男が慰めようとする健気な姿は「今思い出しても泣けてくる」とみずもさんは言う。

滞在許可証取得までの険しい道のり

 生活の基盤を作り、毎日子供たちの面倒を見ながらもやらなければいけない大事なことがある。それは、「滞在許可の取得」だ。  日本人はオーストリアに査証なしで6か月滞在することができる。その間に長期滞在するための滞在許可を取得しなければいけないが、その道のりも厳しかった。  試験に受かった長女は学生ビザを取得できる権利があったが、それに伴った家族の滞在許可は下りなかった。長女は学生ビザ、みずもさんと長男の滞在許可を別で申請すると、最悪の場合、長女の学生ビザだけ下りて、みずもさんと長男のビザが下りないなど家族の運命が分かれてしまうという状況に陥ってしまうのだ。  そうなることはどうしても避けたかった。みずもさんは、自身と子供2人の滞在許可を取るのにありとあらゆる方法を調べ、可能な限りの選択肢を同時進行させていった。  それと並行して滞在許可の取得に必要とされるドイツ語の勉強も進めていたが、幼い子供2人を抱えての学校通いも容易ではなかった 。
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語学学校に通える時間は限られていた
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2004年よりウィーン在住。うち3年ほどカナダ・オタワにも住む。長年の海外生活と旅行会社勤務などの経験を活かし、2007年よりフォトライターとしても多数の媒体に執筆、写真提供している。著書に『カフェのドイツ語』(三修社)、『芸術とカフェの街 オーストリア・ウィーンへ』(イカロス出版)など。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」会員。
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