エンタメ

AIに音楽は作れる?ChatGPTに“サザン風”の歌詞を書かせて気づいた「人間との決定的な違い」

②荒唐無稽なお題を与えてみる

 では、逆に誰かのマネではなく特定のトピックからオリジナリティのある表現を生み出す方が得意なのでしょうか?  「Write a bossa nova song about war on drugs」(麻薬戦争について歌ったボサノバの曲を書いて)と入力します。(ちなみに、with chord progression と加えると、いかにもなツーファイブ進行や転調に、減5度のコードなども使って、勉強した感を出してきます) ChatGPT Aメロで麻薬が家族や暮らしをバラバラにしてしまう悲劇を描き、“お、わかってるじゃん”と、いい調子です。物語はどうなるんだろうとドキドキします。

歌詞がどうしてもポジティブに…

 しかし、またサビがやらかしてしまうのです。 ChatGPT<Let’s take a bossa nova ride, With a melody to match the tide, As we search for a better way, To heal the wounds of yesterday>(昨日の傷を癒やす術を求めて、ボサノバに身を任せよう)  “身を任せよう”じゃねえよ。そんな簡単じゃねえよ。どうしてもポジティブになってしまうのですね。ChatGPTが導き出したものは、詩の形式をとった提言なのです。悪や汚れをそのまま探求することはせず、分析の結果改善すべき問題だと判断してしまう。それこそが、ニック・ケイヴが指摘した<何かを耐え忍んだ経験がない>ということなのではないでしょうか。
次のページ
山下達郎のようなコード進行はできる?
1
2
3
4
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。Twitter: @TakayukiIshigu4

記事一覧へ
おすすめ記事
ハッシュタグ