では、逆に誰かのマネではなく特定のトピックからオリジナリティのある表現を生み出す方が得意なのでしょうか?
「Write a bossa nova song about war on drugs」(麻薬戦争について歌ったボサノバの曲を書いて)と入力します。(ちなみに、with chord progression と加えると、いかにもなツーファイブ進行や転調に、減5度のコードなども使って、勉強した感を出してきます)
Aメロで麻薬が家族や暮らしをバラバラにしてしまう悲劇を描き、“お、わかってるじゃん”と、いい調子です。物語はどうなるんだろうとドキドキします。
歌詞がどうしてもポジティブに…
しかし、またサビがやらかしてしまうのです。
<Let’s take a bossa nova ride, With a melody to match the tide, As we search for a better way, To heal the wounds of yesterday>(昨日の傷を癒やす術を求めて、ボサノバに身を任せよう)
“身を任せよう”じゃねえよ。そんな簡単じゃねえよ。どうしてもポジティブになってしまうのですね。ChatGPTが導き出したものは、詩の形式をとった提言なのです。悪や汚れをそのまま探求することはせず、分析の結果改善すべき問題だと判断してしまう。それこそが、ニック・ケイヴが指摘した<何かを耐え忍んだ経験がない>ということなのではないでしょうか。