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なぜ人生が幸せに感じない?目標よりも大切な「価値観の話」

 ブラック企業にハラスメント……いつ巻き込まれてもおかしくない昨今。常に安定したメンタルを維持することはサラリーマンに欠かせない要素である
ブラック企業

※画像はイメージです(以下同じ)

 今回は、多忙なサラリーマンのためのメンタルヘルス対策について、心理学者にして臨床心理士であるジュリー・スミス博士の著書『一番大切なのに誰も教えてくれない メンタルマネジメント大全』(野中香方子・訳/河出書房新社)より抜粋して紹介します(以下、同書より抜粋)。

「幸せになりたいだけ」に関する問題

 セラピーで進むべき道に光を当て、どうしたいかを考える段階になると、少なからぬクライアントが「わたしはただ幸せになりたいだけです」と言う。  彼らがそう思うのも無理はない。実のところ、幸せという概念は長年にわたって「喜びと満足に溢れた人生」という捉えどころのないおとぎ話に乗っ取られてきた。ソーシャルメディアにも、「ポジティブになろう、幸せになろう、人生からネガティブなものを追い出そう」と語りかける投稿が溢れている。  わたしたちは、「幸せが標準であり、そうでなければメンタルヘルスに問題がある」とか、「物質的な豊かさを手に入れれば、幸せになれる」と思い込まされている。

人間は常に幸せではいられない

ジュリー・スミス

ジュリー・スミス著『一番大切なのに誰も教えてくれない メンタルマネジメント大全』(野中香方子・訳/河出書房新社)

 だが、人間は常に幸せでいられるようにはできていない。生存を脅かす難題に対処するようにできているのだ。感情は、わたしたちの体の状態、行動、信念、周囲で起きていることへの反応だ。それらはすべて常に変化している。したがって、常に変化しているのが正常な状態なのだ。  ラス・ハリスは著書『幸福になりたいなら幸福になろうとしてはいけない』において、感情は天気のようなものだと述べている。感情は常に動き、変化し、予測できるときもあれば、突然、生じるときもある。感情は常にわたしたちの経験の一部だが、天気と同じように、ある瞬間は心地よいが、ある瞬間は耐え難い。非常に曖昧で簡単には説明できないときもある。このように感情が不確かなものである以上、末長い幸せなどというものは存在し得ない。  わたしたちは幸せで充実した人生を送りながらも、人間としてさまざまな感情を経験する。幸せとは常にポジティブであることだと思い込んでいると、気分が沈んだときに自分は敗者だという思いにとらわれてしまう。自分が道を踏み外しているように感じたり、メンタルヘルスに問題があるのではと恐れたりする。
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なぜ人生に幸せを感じられなくなるのか
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一番大切なのに誰も教えてくれない メンタルマネジメント大全

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