仕事

第3次ドーナツブーム「1日5000個売れるドーナツ」が大ヒットを続ける3つの理由

 2006年にドーナツ専門店「クリスピー・クリーム・ドーナツ」が日本初上陸を果たし、軽くて甘いドーナツが大流行。次いで2010年代に入ると、コンビニ各社がレジ横にドーナツを陳列する「ドーナツ戦争」が巻き起こり、再びドーナツに注目が集まった。  そして近年、“第3次ドーナツブーム到来”と言われるほどに人気を博しているのが、ブリオッシュ生地(バターや卵を使用したパン生地の一種)をもとにした「生ドーナツ」である。  その代表格のお店が、中目黒や渋谷に店舗を構える「I’m donut ?」(アイムドーナツ?)。生ドーナツを買い求める人で常に行列ができるほどだ。同じく第3次ドーナツブームを牽引するのが、今回取材する「RACINES DONUT & ICE CREAM」(ラシーヌ ドーナツ & アイスクリーム)。
ドーナツ

1日で5000個を売り上げることもある「ラシーヌのドーナツ」

 池袋と表参道の店舗では、手作りの生ドーナツを販売しており、こちらも行列店になっている。
金子信也

株式会社グリップセカンド 代表取締役社長の金子信也さん

 これほど大人気のドーナツを生み出せたのはなぜか。その理由を探るべく、RACINES DONUT & ICE CREAMを含め、15店舗を展開する株式会社グリップセカンド 代表取締役社長の金子信也さんに話を聞いた。 「売り上げ目的やつまらないことはやらない。しっかりと意味のある出店をしていきたい」(金子さん、以下同)  今回は、そんな金子さんの独特な哲学に迫る。

常勝チームのキャプテン経験がレストラン経営に活きている

 金子さんがレストラン作りで大事にしている精神が培われたのは、小中高大、そして社会人までバスケットボール選手として活躍していた頃までさかのぼるという。じつは、実力派バスケプレーヤーであり、元JBLで活躍。国内外の大会に出場し、“日本代表”にも選出された経験を持つ。  そんなトップアスリートとして階段を上がってきた金子さんにとって、レストランを始めるきっかけは何だったのか。 「海外ではレストランに関わるスタッフの地位も高く、将来のビジョンも持っている人が多い一方、当時の日本のレストランでは、ライフビジョンを描いている人は少なかった。というのも、飲食業界は今より“3K労働”と見なされていた時代で、やりがいや夢を持つ人もあまりいなかった状況でした。そこで、ずっとバスケットボールをやってきた自分の強みを生かし『何か貢献できないか』、『レストランの新しい文化を創れないか』と考えたのが原体験になっています」  学生時代は強豪校、社会人は常勝チームと、いつも全戦全勝を目指す環境下で、キャプテンを務めてきた。 「キャプテンとして、『負けないチーム』を育てることに従事してきました。常勝チームは練習のほかにも、独自の文化や勝ち続けるための土台づくり、基本を大事にしているんです。こうした経験のもと、レストラン経営でも1人でやろうとせずに『ワンチーム』の精神を持ち、みんなで一つのレストランを創り上げていくことを意識しています」

利益追求よりも“実力”に合わせて進んでいく

 自分たちの成長は、スタッフが作るもの。身の丈以上のことをしようとせず、実力に合わせて着実に前へと進んでいく。  金子さんがチームビルディングで意識しているのは「成長するまで待つこと」だと言う。 「我々は飲食店ではなくレストランを作っていて、店舗数や事業規模、他店との競争などは全く意識していません。自分たちのやりたい時に、やりたい場所で、好きなことをやる。このようなスタンスが根底にあり、その結果として都内15店舗まで広がっている。なので、利益を追求するために店舗拡大するという考えはないんですよ」  そんな中、グリップセカンドは「地域密着」を大切にしている。 「地域や街と連携し、そこにスタッフがどう関わっていくか」を念頭に置きながら、店舗運営を行っているそう。とりわけ、池袋の南池袋公園周辺には複数の店舗が点在しており、地元では名の知れるレストランとして地位を築いてきた。
次のページ
予想外の大ヒットに
1
2
1986年生まれ。立教大卒。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に執筆活動を行う。社会のA面B面、メジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ることを大切にしている

記事一覧へ
おすすめ記事
ハッシュタグ