ミュージシャンは一生かけて演じ続ける
――アーバンギャルドの歌詞や世界の中には「少女性」が含まれていると思います。年齢を重ねると、その世界から離れてしまうと思いますが、それでもリスナーの心を掴んで離さないのはなぜだと思いますか? ご自身が思うバンドの魅力を教えてください。
松永:さきほども話にでましたが、アーバンギャルドって、バンドであるのと同時に作品でもあると思うんですね。作品の中では3人がフィクションの存在であるというか……。俳優さんは作品ごとにその役を演じるものだけど、ミュージシャンは、一生かけて自分を演じ続けるようなところがあるのかなと。 だから、アーバンギャルドの中の3人は、変化があっても、老いることはない。その作品のキャラクターとして生き続けるんだろうなと思っています。
僕らって時代に対して、何らかのレスポンスをしてきたバンドではあるんだけれど、独特なサウンドなので、初期作品を聴いても、古さを感じないんですよ。だから、黒歴史でも、白歴史でもない、血を流しながら作り上げた「自分たちだけの“赤歴史”」があるということが、アーバンギャルドの矜持なのかなと思います。
おおくぼ:ちょっと変な言い方ですけど、アーバンギャルドは、売れてないのがいいところだと思うんですよね。大ブレイクしてないから「あの時代、アーバンギャルドがいたよね」というのがなく、常に“ひねくれた人たち”として存在できているのは良さかなと思います。もちろん、もっと売れたいですけど(笑)、たとえば、どの時代でも寺山修司のことを好きな人はいるわけじゃないですか。そんな存在になれたらいいなと思うし、少しなれているのかなと思います。
アーバンギャルドおおくぼけいさん
松永:つまり、今回のベストアルバムのタイトルにもなっているけど、アーバンギャルドが“クラシック”になれたかどうかということだよね!
浜崎:今ひらめいて、すごく嬉しそうに言った(笑)。でも、そんな感じはしますよね。大ブレイクしてないがゆえに、“なんかずっといるぞ”みたいな存在になれているのはいいと思います。
あと、年齢の話で言うと、女性って特に年齢を重ねることに対して抵抗があると思うし、私もあるんですよ。今はずいぶんと変わりつつあるけど、女性は昔から年齢を重ねるごとに価値が落ちていくような見方をされるじゃないですか。だから、女の人が年齢を重ねることに対して「怖がらなくていいよ」と言える存在になりたいなと思っています。
これはSNSの弊害だと思うんですけど、今の女の子たちって、可愛くないと価値がないと思ってる部分が多いんです。「加工とかしなくても十分可愛いのに!」って感じるけど、彼女たちの気持ちもわかる部分があって……。そんな子たちが「どんな大人になったらいいんだろう」と悩むときのロールモデルというか。「『こんな生き方もありますよ』と示せる人になれたらいいな」というのは、最近になって意識するようになりました。「まだよこたん(浜崎)がセーラー服着てるからいけるっしょ」みたいなノリになればいいなって。
――浜崎さんがアーバンギャルドのアイコンとして存在し続けることで、新しいリスナーも増えますし。
浜崎:「こういうの探してた」という子たちが絶対にいると思うんですよね。そうやって常に見つけられるような活動ができたらなと思います。