原作を初めて読んだときは衝撃だった(竹内)
――初めて原作を読まれたときの竹内さんの印象はいかがでしたか?
原作は42年前に描かれた作品。2020年に新装版が刊行された
竹内:劇画タッチのシリアスな絵柄で、モノローグで淡々と話が進むのに、考えていることは「弁当のおかずを食う順番」とか「いかにスキヤキの肉をたくさん食うか」とか、くだらないことばかり(笑)。こういう発想のマンガを初めて読んだので衝撃的でした。自分も人がやらないことをやるのが好きで、俳優をやりながら制作会社(RIKIプロジェクト)を経営しているんですけど、先生も他のマンガ家がやらないことをやって、我が道を突き詰めているなって。その結果、『孤独のグルメ』という大ヒットを生み出されていて、凄いなあって。
「自分も人がやらないことをやるのが好き」(竹内)
久住:『かっこいいスキヤキ』は、僕が21歳の時の作品です。泉晴紀さん(作画)の絵柄って、デビュー当時はかなり劇画調だったんですよね。だからこそ、この絵柄で思いっきりくだらない内容にしたら、そのギャップで可笑しみが出るんじゃないかと思ったんです。泉さんは「笑かそう」とか考えずに、ただただ真面目に絵を描いているのがいいんですよね。でも竹内さん、よく本郷みたいな役を引き受けてくださいましたね。
竹内:誰だってやりたいですよ! いや、もしかしたらやりたくないという俳優もいらっしゃるかもしれませんが……(笑)。俺は今まで2枚目も3枚目もやってきて、それが自分の個性や取り柄になっていると思っているので、「おもろいやん。やるやる!」と即答でした。
――今回のドラマはオムニバス形式で構成されていますが、4話目の「ロボット」(にんにくラーメンをスープまで飲み干したジェームス本郷が腹の調子を壊してしまい、四苦八苦する話)でのコミカルな動きは、今までの竹内さんからは考えられませんでした。
竹内:そうですか? 俺の中では全く俺なんです。だって、誰だって突然腹を壊して焦りまくった経験をしたことはあるでしょ?(笑) だから、恥ずかしいとかはなかったです。真剣に仕事しないとスタッフの方に失礼ですし。
久住:竹内さんがトレンチコートに中折れ帽姿で格好で佇んでいるだけで既に面白い。だから、あまりギャグっぽくせずに、もっとクールに淡々と演じていただいてもよかったかもしれません。脚本もあえてセリフを減らしているんです。観ている人が突っ込む余白を残しておきたくて。
竹内:なるほど。勉強になるなあ。
久住:実は『孤独のグルメ』がドラマになったときも最初はみんな手探りで、撮影に入る前に何度もスタッフとお話しする機会を設けてもらったんです。そこで、原作に合わせなくてもいい部分、原作に合わせた方が面白いよねって部分をすり合わせました。
竹内:心の声でドラマを進めていく役ってなかなかないので、自分も現場に入ってみないとわかんねぇなって部分はありました。