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「競馬のことに関しては絶対に嘘をつかない」ドバイWCを制した川田将雅の本音

武豊さんのコメントが自分のコメントとして掲載されたケースも

川田将雅氏

川田将雅氏 
写真/橋本健

 2021年のチューリップ賞では、(武)豊さんが乗っていたメイケイエールと、僕が乗っていたエリザベスタワーが1着同着となったのですが、レース後の取材で豊さんが「不細工な勝ち方だった」とコメントされました。  それが紙面に掲載されたとき、あろうことか豊さんのコメントが僕のコメントとして記事になっていたのです。しばらくして気づいた僕は関係者に連絡し、「僕のコメントではありません。間違いです」と訂正しました。  これはちょっと珍しいケースですが、表現を変えられて、関係者に誤解を与えてしまったケースは多々あります。  そういうことが続くと、正直、コメントしたくなくなりますし、いつしか縮めようのない文字数を計算してコメントするようになりました。  馬主さんから直接「なんだ、この言い方は」とお叱りがくるぶんにはまだいいのです。その場で誤解が解けますからね。  でも、僕に連絡が直接くることはほとんどなく、「川田はこんなこと言ってんのか。もう乗せなくていいよ」で終わってしまうことがほとんどです。  何度も言いますが、ジョッキーは依頼をいただいてこそ成り立つ仕事。そんなことが続けば死活問題です。

正しく情報を伝えたい

 正直、僕ほど発言をデリケートに捉えているジョッキーはいないかもしれませんが、ジョッキーという仕事に人生をかけている以上、僕の人生に大きく影響するような出来事を「まぁいいや」で放っておくわけにいきません。  僕自身、それだけ責任を持って発言しているので、たとえば僕が発言したままの言葉が記事になり、それが関係者の癇に障り、仕事を干されることになったとしても仕方がないという覚悟はあります。  でも、表現を変えられて誤解をされてた挙句、干されるとなると、それは違いますよね。誰も僕の人生に責任を取ってはくれません。  そこまで思い至らない書き手がほとんどでしょう。自分の人生に責任を取れるのは、自分だけなのです。  僕のコメントを「そっけない」と思っているファンの方も多いと思いますが、たくさんしゃべって表現を変えられたくない、そして嘘をつきたくないからです。どうしても表に出せる言葉がないと思ったら、僕は一切コメントを出しません。  本音を言えば、正しい情報を正しく伝えたい。でも、それが難しいのが競馬界なのです。  ジョッキーでいる限り、‟言葉”にまつわる葛藤とつき合っていくしかないのでしょうね。
1985年生まれ、2004年にデビュー。08年に皐月賞をキャプテントゥーレで勝利してGIジョッキーの仲間入り。12年にはジェンティルドンナでオークスを制し、名実ともにトップジョッキーに。13、14、19、20、21年に最高勝率騎手、16年に特別模範騎手賞を受賞。同年にマカヒキで日本ダービーを制覇。22年は最多勝利・最高勝率・最多賞金獲得の三冠を実現し、史上4人目となる「騎手大賞」を獲得。9年ぶりの「JRA生え抜きリーディングジョッキー」となった。
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