「競馬のことに関しては絶対に嘘をつかない」ドバイWCを制した川田将雅の本音
『頂への挑戦』より抜粋したものです)
僕も人間ですから、嘘をつくこともあります。でも、競馬に関しては、絶対に嘘をついてはいけないと思っています。
なぜなら、僕らが発する言葉を参考に、ファンの皆さんは馬券を買ってくれるからです。その売り上げによって、中央競馬は成り立っているわけですから、そこは事実を伝えなければならないと常々思っています。
とはいえ、多くの人間がさまざまな立場で携わっているのが競馬界です。そこには、複雑に絡み合った利害関係が存在します。
なかでもジョッキーは、馬主さんや調教師など、関係者からの依頼があって初めて成り立つ仕事です。
実際、年間何百鞍もレースに乗りますが、そのすべてが依頼を受けてのもので、しかも依頼先は1つや2つではなく、多岐にわたります。
当然ですが、依頼がなくなれば仕事はできません。個人競技は多々ありますが、これだけ複数先からの依頼で成り立っている競技は競馬くらいではないでしょうか。
だからこそ発言には気を遣うのです。
依頼をくださるすべての方を不快にさせることのないよう、誤解を与えることのないよう、なおかつファンに嘘をつかないよう言葉を選びます。
そうすると、ストレートに表現できないことがたくさん出てきて、ファンに対してはどうしても「そこは裏側を読み取ってください」というようなを出さざるを得ないときもあり、歯がゆい思いをすることも少なくありません。
たとえば、動画で僕の発言をすべて見ていただけるのであれば、そこまでこだわらなくてもいいと思いますが、基本的には、僕が話したことが記者の方を通じて活字となって、関係者やファンの目に届きます。
その過程で表現を変えられたりすると、まったく違う伝わり方をしてしまうことがあるのです。
若い頃は、それこそ一生懸命に答えなければと思い、言葉数多くバーっとコメントしていました。たとえば、「4コーナーまですごくいい雰囲気で、手応えもよかったんですけどね。直線ではちょっと伸び切れなくて……。ん〜」と答えたとします。
それが記事になると、「手応えはよかったけど、案外だったね」といった表現になったりする。
意味が全然違いますし、読んだ側の印象もまったく変わってきますよね。そもそも僕は、「案外」なんていう言葉自体、使うことはありません。それでも、紙幅に合わせて都合よく使われてしまうことがあるのです。
ご存知の通り、競馬はギャンブルです。
世の中には、あまりいいイメージを抱いていない方がいることも理解していますが、ギャンブルであると同時に、スポーツという側面があることをもっと知ってほしい——。そんな思いを僕はずっと抱いてきました。
(本記事は、川田将雅著自らの言葉に宿る責任、だから僕は嘘をつかない
記事になると表現が変わることも
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1985年生まれ、2004年にデビュー。08年に皐月賞をキャプテントゥーレで勝利してGIジョッキーの仲間入り。12年にはジェンティルドンナでオークスを制し、名実ともにトップジョッキーに。13、14、19、20、21年に最高勝率騎手、16年に特別模範騎手賞を受賞。同年にマカヒキで日本ダービーを制覇。22年は最多勝利・最高勝率・最多賞金獲得の三冠を実現し、史上4人目となる「騎手大賞」を獲得。9年ぶりの「JRA生え抜きリーディングジョッキー」となった。
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『頂への挑戦』 「結果」を出すメンタルマネジメントの極意 |
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