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森保ジャパン、苦戦の裏に潜む“野望”。完成形は「世界でも稀なチーム」に

危険な場面は多々あったが、収穫も

 新戦術を取り入れたこの2試合での日本代表の出来については、随所で可能性は見せたものの、決して出来はよくはなかった。  サイドバックがハーフレーンで、相手に背後から寄せられた状態でパスを受けることに慣れておらず、思うようなパスワークを発揮できなかった。それが影響したのか、後方から縦パスを入れる役目を担ったセンターバックが消極的となり、パスの出しどころがなく困惑していた。そのプレーが遅くなると、しっかりと守備陣形を固めた相手のプレッシングにはまってしまうわけだ。自陣ゴールに近い位置でボールを奪われたり、高い位置を取ったサイドバックのスペースを突かれて守備を崩されたりと、危険な場面も多々あった。  とはいえ、良い形が見られたのも事実だ。しかも、2戦目にはしっかりと修正してサイドバックの配置をできる場面とできない場面に切り分けて使い分けをしていた。さらに、サイドの三笘や伊東が引いて縦パスを受けた後にできたサイドのスペースで、バングーナガンデや菅原が受けようと試みる連係も見せていた。

失敗しても「元に戻せばいい?」

 新戦術採用は、現段階では良いチャレンジと言える。採用しているチームは世界でも稀で、完成形は革新的とも言える戦術として称えられることだろう。  ただ、問題はその完成形を日本代表で実現できるのかという点だ。三笘や伊東という現在の日本代表における強みを生かす良い手段ではあるが、一方でサイドバックに求められる役割は非常に大きい。菅原やバングーナガンデは期待はできるが、当然クラブで負う役割とは異なってくる。にもかかわらず、短い代表活動のなかで完成形に近づけられるのだろうか。  ある意味、長く困難な道を選択したと言えるが、その裏で森保監督には打算があることが推察される。もしも、この新戦術採用が失敗に終わっても、元に戻せばいいと考えているのではないだろうか。
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新戦術への挑戦は「来年9月」までか
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スポーツライター。日本最大級だったサッカーの有料メディアを有するIT企業で、コンテンツ制作を行いスポーツ業界と関わり始める。そのなかで有名海外クラブとのビジネス立ち上げなどに関わる。その後サッカー専門誌「ストライカーDX」編集部を経て、独立。現在はサッカーを中心にスポーツコンテンツ制作に携わる
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