更新日:2023年04月09日 01:39
エンタメ

2023年春ドラマ16本を総ざらい。テレビ各局の“狙いと傾向”を考察する

 春ドラマが始まる。プライム帯(午後7時~同11時)は計16本。冬ドラマより1本増えた。テレビ朝日が日曜の午後10時台にドラマ枠を新設するからだ(制作は大阪・朝日放送)。春ドラマの傾向を考察したい。

警察・刑事ドラマが多い理由

育休刑事

番組公式HPより

 まず、警察・刑事ドラマが多い。冬ドラマは4本だったが、5本ある。全体の3分の1近い。 ■『風間公親-教場0-』(フジテレビ、月曜午後9時、10日から)主演・木村拓哉(50) ■『育休刑事』(NHK、火曜午後10時、18日から)主演・金子大地(26) ■『特捜9 season6』(テレビ朝日、水曜午後9時、5日から)主演・井ノ原快彦(46) ■『ケイジとケンジ、時々ハンジ。』(テレビ朝日、木曜午後9時、13日から)主演・桐谷健太(43) ■『ラストマン-全盲の捜査官-』(TBS、日曜午後9時、23日から)主演・福山雅治(54)、大泉洋(49)  なぜ、警察・刑事ドラマは多いのか。理由はまず単純に人気があるから。勧善懲悪の物語を好むのは日本に限った話ではなく、海外も同じ。特にアメリカとイギリスは警察・刑事ドラマ大国と言って良いくらい。  警察・刑事ドラマが世界中で観られているわけは、第一に時代に合わせ、さまざまな題材を盛り込めるから。たとえば貧しさを犯行動機にすれば、貧困問題を掘り下げられる。若者が罪を犯すという設定にしたら、未成年者たちの苦悩を描くことも可能となる。  ストーカー犯罪やSNSを悪用した中傷など今日的な問題も描ける。一転して政治家や官僚の堕落を下地にした物語もつくれる。間口の広い便利なフォーマットなのだ。また、さまざまな年齢の俳優をレギュラー出演者に出来るため、幅広い層の視聴者を惹き付けられる。ベテランから若手まで刑事役に据えられるからだ。

どの年齢層にも刺さる配役

『風間公親-教場0-』の場合、主演の木村は若手刑事を指導する刑事指導官に扮する。木村はミドル層以上の女性ファンに今も絶大なる人気を誇る。一方、指導される側の若手刑事・瓜原潤史役で第1話から登場するのが人気急上昇中の赤楚衛二(29)。若い視聴者も惹き付けられる。  ビジネスドラマだと、どうしても40代以上の登場人物ばかりにスポットライトが当たりがち。逆にラブストーリーだと、40代以上は影が薄くなる。その点、刑事ドラマはどの年齢層の出演者にも見せ場がつくりやすい。 『ラストマン-全盲の捜査官-』もそう。福山が全盲のFBI(米国連邦捜査局)特別捜査官・皆実広見役で、その世話役を務めるのが警察庁人材交流企画室室長・護道心太朗役の大泉。どちらも主にミドル層に人気がある。一方、King&Princeの永瀬廉(24)が、心太朗の甥で警視庁捜査1課の護道泉刑事を演じる。こちらのドラマも若い視聴者にも目配せしている。 『ラストマン』は全盲の皆実と健常者の護道が協力して犯人を逮捕する物語。「共生」も描かれるわけだ。冬ドラマ『星降る夜に』(テレビ朝日)での柊一星(北村匠海)に続き、障がい者の社会参加が当たり前のこととして描かれる。ドラマ界は新たなステージに入ろうとしている。  アメリカでは障がい者と健常者が共生する作品が常識化している。たとえば人気小説『リンカーン・ライムシリーズ』を原作とするドラマ、映画。主人公の元ニューヨーク市警の天才科学捜査官は捜査中の事故で四肢マヒとなったが、現役捜査官と協力して難事件を次々と解決する。  また、聴覚障がい者の女性捜査官がFBIのチームの中で活躍するドラマ『F.B.EYE!! 相棒犬リーと女性捜査官スーの感動!事件簿』も大ヒットした。実話に基づく物語だった。ほかの欧米ドラマにも障がいのある人がごく自然に登場する。日本もそうなるに違いない。
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個性派揃いの恋愛ドラマ4本
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放送コラムニスト/ジャーナリスト 1964年生まれ。スポーツニッポン新聞の文化部専門委員(放送記者クラブ)、「サンデー毎日」編集次長などを経て2019年に独立。放送批評誌「GALAC」前編集委員

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