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『べらぼう』歴代最低視聴率でも「面白い大河になる」予感。綾瀬はるかの“スマホ”は序の口、ハズレなし脚本家の狙いとは

NHKの新大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(日曜午後8時)が5日に始まった。第1回の個人全体視聴率は7.3%(世帯12.6%)。世帯視聴率は昨年の『光る君へ』の12.7%を0.1ポイント下回り、大河の歴代最低を更新した(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。 このまま沈むのか、それとも浮上するのか。先行きを読み通したい。まず関東地区の視聴率のみではフラットな評価を行いにくいので、関西と名古屋の数字も見てみたい。
べらぼう

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~ 前編』(NHK大河ドラマ・ガイド)

世代別、性別にみた個人視聴率

■関西 個人7.1%(世帯12.0%) ■名古屋 個人7.3%(世帯13.2%)  スタートダッシュに成功したとは言えないが、出だしでつまずいたとも言いがたい。それが妥当な表現ではないか。第1回で高視聴率が獲れなかった理由について、「遊郭だった吉原が舞台なので女性に敬遠された」との声もあるようだ。本当だろうか。確かめるため、性別、世代別の個人視聴率も見たい。 ■M1(男性20~34歳)1.1% ■M2(同35~49歳)2.3% ■M3(同50歳以上)11.0% ■F1(女性20~34歳)1.8% ■F2(同35~49歳)3.5% ■F3(同50歳以上)14.7%  実際の視聴者数は女性のほうがかなり多かった。虐げられていた女性たちの物語でもあるから、不思議ではない。また、主人公の蔦重こと蔦屋重三郎役の横浜流星(28)が女性に人気が高いことも見逃せないだろう。  横浜は2011年にデビュー。2020年に日本テレビ『私たちはどうかしている』、2022年に映画『嘘喰い』、2023年に同『ヴィレッジ』、2024年に同『正体』にそれぞれ主演した。全身を駆使した躍動感のある演技をする人だが、それでいて目しか使わないような細かい表現も得意。『正体』では昨年の報知映画賞の主演俳優賞を受賞した。

格差と搾取の場だった吉原を舞台に

 第1回では蔦重が、女郎に満足に食事を与えない女郎屋の主人たちを怒鳴り飛ばした。蔦重よりはるかに格上の人間たちである。 「オレたちは女郎に食わせてもらってんじゃねぇか!」  貧しい家から吉原に売られてくる女郎たちにとって、唯一の希望は食事が取れるようになること。ところが、病気だったり、稼ぎが悪かったりすると、十分な食事が与えられなかった。蔦重は女郎屋の主人たちに炊き出しの実行を訴えるが、一笑に付されたため、怒りを爆発させた。もっとも、蔦重の願いは聞き入れられず、それどころか義父で引手茶屋の駿河屋市右衡門(高橋克実)によって階段の2階から1階へ突き落とされてしまう始末。蔦重は無鉄砲なところのある青年らしい。引手茶屋とは客を女郎屋へ案内する茶屋である。  一方で栄養不足と胸の病から女郎の朝顔(愛希れいか)が他界した。蔦重は幼いころに世話になったため、弁当を届けていたが、朝顔は手を付けず、腹を空かせた若い女郎たちに食べさせていた。かつての朝顔は花魁(位の高い女郎)だったものの、体を壊してしまったため、最下層の女郎が集まる河岸見世にまわされていた。  朝顔の死や女郎屋の主人たちの冷酷ぶりにより、吉原が格差と搾取の場でもあったことが強調された。脚本を書いている森下佳子氏(53)は18世紀後期の江戸を描くことにより、現代社会の問題を浮かび上がらせようとしている。
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江戸時代にスマホの地図アプリが…
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放送コラムニスト/ジャーナリスト 1964年生まれ。スポーツニッポン新聞の文化部専門委員(放送記者クラブ)、「サンデー毎日」編集次長などを経て2019年に独立。放送批評誌「GALAC」前編集委員

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