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“赤字膨張”の楽天。厳しい懐事情でも「4928億円赤字のモバイル事業」に執着し続ける理由

加入者を促進するマーケティング費用もカット

 代表の三木谷浩史氏は、決算説明会において2023年度にモバイル事業の単月黒字化を目指すと明言しました。この発言にも楽天の苦境が見え隠れします。先行投資で加入者を獲得するよりも、コストカットに動くことを示しているからです。  楽天モバイルは莫大な費用をかけてテレビCMを行っていました。これを縮小し、Webマーケティングや紹介営業にシフトするといいます。三木谷氏はとにかくコストをカットして効率的な体制を作ると意気込みました。  楽天が大赤字を出す主要因となった、モバイル事業の基地局開設はひと段落し、2023年は月150億円程度のオペレーションコストの削減が見込まれています。その分を加入者獲得に向けた広告宣伝費に投じることもできましたが、マーケティング費用も削減するという判断でした。  2023年も設備投資額には3000億円程度かかる見込みです。徹底的なコストカットで何とか費用を捻出するという考えなのでしょう。

営業会社へと変貌を遂げる楽天

 割を食うのが楽天の社員。2022年から2023年にかけて、楽天は従業員に対して携帯電話の契約獲得ノルマが課されたと報じられました。従業員には紹介コードが割り振られ、紹介された人がコードを入力して契約に進む仕組みが設けられたのです。従業員の中には5回線程度の契約が求められたといいます。  三木谷代表は決算説明会で、「マス広告から楽天グループの資産を活用する」と発言しました。楽天はモバイル事業単体で4600人、会社単体で8400人、連結で32000人の社員がいます。正に資産の活用で契約者を伸ばそうとしていると言えるでしょう。  SNSでは楽天モバイルの管理職が過酷なノルマを課され、親族などから20回線以上の契約を獲得したなどという投稿もありました。楽天はかつてのスマートなIT企業から、ゴリゴリの営業会社へと変化しています。
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楽天がモバイル事業にこだわる理由
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フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界
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