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“赤字膨張”の楽天。厳しい懐事情でも「4928億円赤字のモバイル事業」に執着し続ける理由

楽天がモバイル事業にこだわる理由

 なぜ、楽天はこれほどまでにモバイル事業にこだわるのでしょうか。国内ECの流通総額を引き上げたいからに他なりません。  流通総額とは、楽天市場や楽天トラベル、ブックスなどにおいて、取引された総額を示します。楽天はEC事業者の出店料や手数料で収益を得るビジネスモデルです。流通総額をどれだけ引き上げられるかが成長のポイントになります。  楽天の2022年12月期の流通総額は5.6兆円でした。これを早期10兆円に引き上げるという野心的な目標を掲げました。  2022年12月期の楽天の国内ECの売上収益はおよそ8000億円でした。流通総額が10兆円まで膨らむと、売上収益は1兆4000億円程度まで引き上げられる計算です。

利益率が低くても十分稼げる計画とは

 携帯電話の後発組である楽天にとって、モバイルサービスの武器は価格競争力しかありません。料金を引き下げて他社と差別化を図るしか強みがないのです。そうなると、モバイル事業単体で高利益体質になるのは不可能に近いと言えます。  しかし、国内のEC事業の営業利益率は12%程度出ており、安定的かつ利益率の高いビジネスです。モバイルユーザーに楽天ポイントを付与し、EC利用を高めようとしているのでしょう。  三木谷氏は流通総額10兆円の達成において、モバイル加入者の増加が重要だと話しました。裏を返すと、携帯電話というハードに依存しなければ、流通総額の急拡大が難しいということになります。  楽天は計画通り成長軌道に乗るのか。その瀬戸際に立たされています。 <TEXT/中小企業コンサルタント 不破聡>
フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界
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