更新日:2023年05月18日 17:33
スポーツ

“立浪監督の打撃指導”が原因という説も。なぜ「中日は最下位から抜け出せないのか」

野村監督が「細かな打撃指導を行わなかった」理由

 私は野村克也氏に生前、こんな質問をしたことがある。 「どうして監督時代に、選手に細かな打撃指導を行わなかったのですか?」  王貞治に次ぐ657本の本塁打を放ち、通算2901安打を誇る野村氏が、監督時代に選手を手取り足取り打撃の指導をしたという話を聞いたことがないことを不思議に思ったからだったが、野村氏は私の問いにこう答えた。 「みんながオレとまったく同じ骨格で、筋力の強さや体の柔軟性も同じだって言うんだったら教えることができるけど、現実にはそんなことあり得ないよね。十人十色という言葉があるように、10人いれば筋力の強さもみな違えば、体の柔軟性だって違う。だからこそ『オレの打ち方が正しい』なんて自信を持って言えないし、細かな打撃指導はしなかったのはその点が大きいからなんだよ。  それにオレはよくコーチたちに、『自分の経験で得たことが絶対に正しい』という言い方で指導するなよと、口酸っぱく言い続けていた。仮に10人中10人を育てたマニュアルがあったとしても、11人目にそれが当てはまるとは限らない。『人を育てる』っていうのは、それだけ繊細なものなんだということは、みんなに知っておいてもらいたかったから、そう言っていたんだけどね」

信頼関係が築けているのか?

 野村氏は指導者がやってはいけないことの1つに、「教え続けた挙句、『彼は才能がなかった』の一言で片づけてはいけない」ということを挙げていた。 「自分の指導マニュアルだけを頼り、選手がそれに納得していないにもかかわらず、『こうやって打たないと、次から使わないよ』と言い渡す。それで育たなければ、『彼には才能やセンスがなかった』で終わらせてしまう。人を育てることを、その一言で簡単に結論づけてはいけないんだよ」  今の中日ははたしてどうだろうか。首脳陣と選手との間で信頼関係が築けているのかどうかが気になるところである。
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筆者は「ビシエドの復活」に期待
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スポーツジャーナリスト。高校野球やプロ野球を中心とした取材が多い。雑誌や書籍のほか、「文春オンライン」など多数のネットメディアでも執筆。著書に『コロナに翻弄された甲子園』(双葉社)
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