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『THE SECOND』が選んだ「3点審査」を徹底分析。ギャロップ、マシンガンズ、囲碁将棋が「284点」で並んだ奇蹟の夜を振り返る

「1点が0人」だったのは2組しかいない

 ただ、「グランプリファイナル」の審査で気になったのは、2組を見終わってから2組分を採点していたこと。これだと2組を比べた相対評価ができてしまうのである。 「ノックアウトステージ」では、1組のネタを見終わるごとに採点が行われていた。「グランプリファイナル」の冒頭でも、宮司アナが審査基準を説明する際に「絶対評価で点数をつけてください」と付け加えている。番組側としては「どちらが面白かったか」で点差を付ける相対評価ではなく、「自分は面白かったか否か」で点数を決める絶対評価を求めているのだ。対戦カード内に閉じた優劣ではなく、漫才そのものが面白かったかどうかで点数を付けてもらいたい。だからこそ「どちらも面白い(両者3点)」という余地も可能にしている。  ただ、客席の審査コメントには「○○だったので△△のほうに3点つけました」と、相対評価をうかがわせるものもあった。M-1やキングオブコントの審査では、勝敗を決めるためにあえて点差をつける審査員もおり(そもそもアンバサダーの松本人志がそう)、「賞レースの審査は相対評価」という空気はどうしてもあるだろう。 『THE SECOND』の3点審査で点差をつけるには、1点差(1点-2点、2点-3点)と、2点差(1点-3点)で3つのパターンがあり、「こちらが飛び抜けて面白いから2点差だ」と採点すると、もう片方は1点(面白くなかった)になってしまう。正直「これに1点をつける人がいるんだ……」と感じる場面もあったが、実は1点の中には「面白くなかった人」と「面白かったけど点差をつけるために1点にした人」が含まれると考えていいのかもしれない。  そのような状況下で、「1点が0人」だったのは2組しかいない。100個のカツラに翻弄された1回戦第3試合のギャロップと、生意気な副業を始めようとする準決勝第2試合の囲碁将棋だ。そうなると、やっぱりギャロップvs囲碁将棋が事実上の決勝戦だったのでは……と思うと、決勝戦でマシンガンズがそのことをすぐに吠えまくるのだった。

M-1で評価されにくいネタも「アリ」になる

 決勝戦のマシンガンズvsギャロップは、対象的なネタ同士の戦いだった。 「ここまで来れると思っていなかったからネタがないんだよ!」「ネタがないのにここに立ってるメンタルすごくない?」と、それすらもネタにし、「喉がかれちゃったよ!」「優勝させてくれ」と即興のしゃべりで爆笑をさらうマシンガンズ。「フランス料理で『パンが一番美味しかった』って悲しすぎる」というフリから、林がシェフのサクセスストーリーを延々と4分以上語り続け、最後に「パン!?」という大オチに持っていくギャロップ。 「ネタがない」と言いながら舞台に立つのも、4分間をまるまるフリに使うのも、どちらもM-1ではできない漫才だろう。16年以上のキャリアと、ネタ時間6分の『THE SECOND』だからこその戦い方だ。  そもそも今大会を振り返ると、「M-1では評価されにくいかも」というくだりが多いのだ。トップバッターから全方位に失礼な金属バット、Yahoo!知恵袋をプリントアウトして持ってくるマシンガンズ、お笑い好きに向けたボケを大盛りにする三四郎、ハゲいじりや下品な言葉(吐瀉物など)を使うのも評価されにくい。  でも観客が笑うならそれは「アリ」になる。劇場で笑いをとれるのは、審査員に高い点をもらうための対策ではなく、なにがなんでも目の前のお客さんを笑わせるという気迫。芸歴16年以上のベテランが、それをずっと見せつけてくれるのだから、楽しくないわけがない。  採点後、対戦相手同士が平場でしゃべる時間があるのも良かった。1対1の対戦だからこそ、相手を讃え、握手し、自分たちの分の活躍も託す姿が生まれる。先輩のテンダラーに勝って涙ぐむギャロップ毛利や、負けたのに「囲碁将棋がやってきたことは『正』しい」と人文字をいれる超新塾と、それにグッとくる囲碁将棋文田など、振り返りたい場面がいくらでもある。
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スタジオセットを囲む「青い炎」
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ライター。大手SIerにてシステムエンジニアとして勤務後、フリーランスのライターに。理系・エンジニア経験を強みに、企業取材やコーポレート案件など幅広く執筆するかたわら、「路線図マニア」としてメディアにも多数出演。著書に『たのしい路線図』(グラフィック社)、『日本の路線図』(三才ブックス)、『桃太郎のきびだんごは経費で落ちるのか?』(ダイヤモンド社)など。X(Twitter):@inomsk

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