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突然の地方移住。元DJの47歳主婦が語る「私が“山の上のパン屋”をはじめたワケ」

パンだけでなく日用品もそろえたワケ

 さらに、来てくださった方々により楽しんでもらえるように、パンだけではなく日用品も良質なものを揃えました。開業当初は1人でパンを焼いていたため、製造量が少なく、せっかく山の上まで登ってきていただいても、タイミングによってはパンが買えないという状況がありました。  来店したお客様ががっかりする様子に胸が痛み、自分がこの状況をつくっていることが悔しく、どうしたら喜んでいただけるかということをずっと考えていたのです。 「わざわざ」のパンが好きな方は、おそらく食にこだわりがあるだろうと食品を取り揃え、お客様が喜んでくれそうな消耗品や日用品で、自分が愛用していて友人にもおすすめできるような商品をセレクトして、どんどんラインナップに加えていきました。買えないことがないように、種類も在庫もできるだけ多いほうがいい。  近所のお客様には、できれば近隣で販売していないようなめずらしいもののほうが喜ばれるだろう。遠方から来たお客様には、逆に長野でしか買えないものがうれしいだろう。作り手に物語があり、厳選された、ここでしかないものも見つけられたらいい。

お客様が「来たい」理由を増やしていった

平田 はる香

平田 はる香さん

 店で会話したお客様の顔を1人ひとり思い出しながら、あのお客様はこういうものが喜ぶだろうと想像して、商品を選んでいきました。  夫婦で来たら、家族で来たら、小さな子どもを連れてきたら、お年寄りだったら、サラリーマンだったら、自営業だったら、同業者だったら、旅行で来たら、近所だったら……。とにかく、想像力を働かせて、さまざまな人の気持ちになって、どんなお店だったらうれしいかを考えて、サービスをつくっていく。  そうやって、どんどん「来たい」という理由を増やしていくことで、今の形になっていきました。私が見つけた素敵なものを伝えたい、共有して分かち合いたい、みなさんにも楽しんでいただきたいという根っこの気持ちは今も変わりません。  自分が良いと思ったもの、信じているもののためなら、努力を惜しまない。むしろその努力は、自分の生きがいへとつながっていったのです。
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DJとしての成功から「みんなの幸せ」に
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1976年生まれ。2009年長野県東御市の山の上に趣味であった日用品の収集とパンの製造を掛け合わせた店「わざわざ」を一人で開業する。段々とスタッフが増え2017年に株式会社わざわざ設立した。2019年東御市内に2店舗目となる喫茶/ギャラリー/本屋「問tou」を出店。2020年度で従業員20数名で年商3億3千万円を達成。2023年度に3,4店舗目となるコンビニ型店舗「わざマート」、体験型施設「よき生活研究所」を同市内に出店予定
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山の上のパン屋に人が集まるわけ

健やかに、年商3億円

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