先に書いた「バスに乗っているとき、堂々とポケットに手を突っ込んでカネを盗もうとする輩もいた」というエピソードからも分かるように、ジャマイカでカツアゲやタカリに遭うことは日常茶飯事だったそうだ。 「ヤツらは『もらえたらラッキー』くらいの感覚で仕掛けてくるから、軽いタカリは日常会話に普通に混じってる感じなんだね（笑）。それは俺らが有名になってからも同じ。たとえばジャマイカのゲトーのダンスに行くと、『ようMIGHTY CROWN！ 久しぶりだな！ ちょっとカネくれよ。酒買ってきてやるから』みたいに話しかけてくるヤツが絶対にいる。それでカネを渡したりすると、酒を買ってきてくれることはあっても、お釣りはまず返ってこないんだよね（笑）。 　1000円渡してお酒が700円だったら、『はい、300円お釣りね』って返すのが日本のスタイルでしょ。でもジャマイカは酒の値段が400円でも300円でも、まずお釣りは返さない。あとこっちが『おい、お釣りくれよ』って言えないような雰囲気を作るのが上手いんだよね」 　そしてジャマイカでは「名声のある人間はカネ払いをケチってはいけない」という空気があるという。 「名声がある＝普通の人よりカネがあるってことだから、カネも出すときは出さないと尊敬されないんだよね。だからジャマイカの人気アーティストは大変みたいだよ。自分の地元で『今日のメシを買うカネもないんだよ』みたいに言われたとき、カネを渡さないと『ダメなヤツ』って周囲から見られちゃうから。ゲトーから勝ち上がってスターになったアーティストには、そういう苦労が特にあるんじゃないかな」 　そうした「カネを持っている人が奢る文化」は日本の芸能界などにも見られるものだが、日本との違いもあるという。 「日本の芸能人の場合は、基本的に年上が年下に奢るスタイルでしょ。でもジャマイカは年下・年上関係なく、売れているほうが奢る。ていうか、そもそも年齢を気にしないし、『何歳？』『何年生まれ？』みたいに聞くこともない。だから、昔から知っている人でも『あの人そういえば何歳なんだろう？』みたいなことはよくあるね」 　もう一つ、小ネタ的なヤバいエピソードとして、「ジャマイカでは女の人が立ちションしているのを何回も見かけた（笑）」なんていう話もあった。 「目撃したのは無料のストリートダンスのとき。ジャマイカでもデカいフェスとかはトイレも用意されているから、立ちションする人なんてほぼいないけど、ストリートのダンスだと、男は車の影とかに隠れてションベンをするんだよね。で、俺が車の裏側に回ったら、立ちションしている女の人に遭遇した。『女って立ちションできるんだ……』ってことも含めて衝撃だったね（笑）」 　ちなみにSIMON氏が世界を何十カ国も巡ったなかで、女性の立ちションを何回も見かけたのはジャマイカだけだったという。 「俺が見た人はすごく手慣れた感じだったから、常習的にやっていたのかもしれない（笑）。ただ言っておきたいのは、トイレもないようなダンスでそういう光景を見ただけで、他の場所で同じことをするような女の人はいないってこと。ジャマイカでも女子は女子っぽいし、美意識が高い人も多いからね。俺が見かけた光景はジャマイカでもレアケースだと思うよ」