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犬猫「殺処分ゼロ」の裏に“保護団体頼り”の現状。ひっ迫する現場のリアルな声を追う

殺処分ゼロを目指す条例を制定

犬の[殺処分ゼロ]現場ルポ

茨城県は’21年度から2年連続で犬の殺処分ゼロを達成。’22年度の犬の収容頭数は、’21年度の985頭から少し増え、1062頭だった 出典/’22年度 茨城県における犬猫の殺処分ゼロの維持について(県生活衛生課)

 処分はしない。しかし、施設は常に収容過多な状態だ。同施設の動物棟は、築44年。病気やシニアの犬用の個別房は、人ひとりが座るといっぱいになるほどの広さしかない。担当職員はこう続ける。 「ここ2年間はなんとか処分をせずに済んでいますが、『殺処分ゼロ』というこの数字は、民間のボランティアさんの存在なしにはまず達成できません。例えば、今日犬が4頭収容されて、ボランティア団体さんが4頭引き出してくださる。県として今すぐ収容を増やせるような大きな箱ものを造るのは予算的にもなかなか難しい。民間の団体さんの協力があるからこそ、ギリギリの状態でしのいでいます」  譲渡ボランティアとしてセンターに登録している民間の保護団体に対して、県は飼育管理費の一部を補助する譲渡サポート事業や、譲渡する際に希望に応じて避妊去勢手術を行っている。  茨城県は’16年に犬猫の殺処分ゼロを目指す条例を制定した。だがそれは根本的な問題解決にどの程度影響しているのだろうか。今、行政の頼みの綱である民間団体が悲鳴を上げている。

民間の協力ありきの殺処分ゼロのからくり

犬の[殺処分ゼロ]現場ルポ

年間でおよそ1000頭の避妊去勢手術を行い、譲渡数は年300頭を超えるCAPIN代表の鶴田氏(右)と理事の松下明行氏(左)

「『殺処分ゼロ』という数字は、私たち多くのボランティアの血のにじむような協力のもとに成り立っています」  そう語るのは、茨城県の県南地域を中心に、全国で犬猫の保護や譲渡活動を行う認定NPO法人CAPIN(動物愛護を考える茨城県民ネットワーク)代表の鶴田真子美氏だ。
犬の[殺処分ゼロ]現場ルポ

自然豊かな広大な土地で、ボランティアが常に犬を外に連れ出しては散歩をしていた

 450人を超えるボランティア会員たちとともに、前述の茨城県動物指導センターから毎週のように犬や猫を引き出し、現在シェルターでは150頭を超える犬と、約70頭の猫を保護している。山と田園に囲まれ、広大な敷地に設けられた手作りの柵の中で、犬たちは生き生きと駆け回っていた。  敷地は基本的に出入り自由で、遠方から2時間半かけて通う人々や、出勤前の早朝3時に同施設に立ち寄って散歩や世話をする人もいる。鶴田氏はこう続ける。 「子犬や子猫は譲渡先や里親が見つかりやすいので、センターから率先して引き出す団体は多いです。問題なのは、シニア犬だったり、人に不慣れな成犬です。うちはそういった犬たちを積極的に引き取っていますが、県はボランティアに丸投げ状態です」
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負担が増え続ける民間団体の現場とは?
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