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犬猫「殺処分ゼロ」の裏に“保護団体頼り”の現状。ひっ迫する現場のリアルな声を追う

 相次ぐ「殺処分ゼロ達成」の発表は喜ばしい。けれどその道程は決して楽ではなかったはずだ。そしてゼロを維持するとなると事はさらに深刻だろう。時代は変わったのか。それともまだまだこれからなのか。“ゼロの裏側”を探るべく現地を訪ねた。

「殺処分ゼロ」の裏に“保護団体頼り”の現状

犬の[殺処分ゼロ]現場ルポ

茨城県動物指導センターの築44年の動物棟。性格や相性などを考慮し、およそ160頭の犬が収容されていた

 体中にまとわりつくような蒸し暑さの中、糞尿とエサと消毒液のにおいが漂い、混じり合う。牙を剥き出しにして、一心不乱に吠え続ける犬もいれば、折り重なるようにひしめき合い、無言でこちらを見つめて警戒する犬たちもいる。茨城県の中部に位置する茨城県動物指導センター。数年前まで、ここでは多くの犬猫たちが殺処分されていた。
犬の[殺処分ゼロ]現場ルポ

環境省が公開した統計資料をもとにグラフを作成。’21年度、全国の保健所や動物愛護・指導センターで殺処分された犬猫の数は、犬が2739頭、猫が1万1718頭と、前年度から1万頭近く減少して過去最少殺処分数を更新。出典/犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況(環境省)対象期間:ʼ21年4月1日~ʼ22年3月31日

 環境省が公開した’21年度の「犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況」によると、全国の犬猫の殺処分数は1万4457頭。過去最少殺処分数を更新した。  全国的にも、熊本県や神奈川県、石川県が続々と「殺処分ゼロ」を達成している。茨城県も’05年度から8年連続で犬の殺処分が全国最多という状況から脱して、’21年度に初めて殺処分ゼロとなった。

日々増え続ける行き場を失った犬たち

 しかし、ゼロという数字の裏側には手放しでは喜べない事情が横たわる。同センターの愛護推進課の担当職員は、「現在センターに収容されている犬の頭数は、想定を超えた161頭(6月29日現在)。なかには、譲渡先が見つからなかったり、攻撃性や病気などの問題で“譲渡不適”と判断されたり、2年以上も長期で収容されている犬もいる」という。  これは茨城県に限った話ではないが、行き場を失った犬たちの命運を分けるのは、民間の愛護団体をはじめとした“ボランティア頼み”となっているのが現状だ。 「収容されるのは、人の無責任なエサやりで繁殖してしまった野犬や、放し飼いで迷子になった犬などです。収容頭数自体はゆっくりと減っていますが、犬猫はそれぞれ年間1000頭前後が収容されます。茨城県は気候が温暖で、可住地面積が広いことから、野犬にとって環境がよく、増えやすい。もともとこの施設も、長く犬を保管する場所ではありません」(同職員)
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殺処分ゼロを目指す条例は問題解決になるのか?
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