ニュース

犬猫「殺処分ゼロ」の裏に“保護団体頼り”の現状。ひっ迫する現場のリアルな声を追う

多くのボランティア団体がひっ迫状態

犬の[殺処分ゼロ]現場ルポ

CAPINの施設内には、犬猫の遺骨が並ぶ。「ボランティアの方々が自主的に供養してくれている」と理事の松下氏

 今年2月には、登録をしているボランティア団体に、同センターからメールが届いた。 「『成犬の収容が200頭を超えてしまい、十分な飼育環境を整えることができないため、殺処分を避けて通れない状況を迎えています』と連絡がありました」と鶴田氏。  対象となったのは、収容期間が1年を超えても引き取り手がなかった成犬27頭だった。 「『救いの手を差し伸べてくださいますよう最後のお願いをさせていただきます』とのことでした。私たちもセンターの職員さんも、必死に目の前の命を繫ぐために駆け回っています。27頭については、13頭をうちが引き出しました。他団体さんのご協力もあり、すべての犬たちの命が救われました」(鶴田氏)  CAPINでは収容頭数の増加により、鶴田氏が身銭を切って収容用の土地と空き家を購入し、活動を続けている。資金も人手も余裕はない。 「収容される犬猫の数を減らさないと、根本的な解決は望めません。このままでは受け皿になっている多くのボランティア団体が押し潰されてしまいます」

悪質な生体販売ビジネスによって問題が複雑化

犬の[殺処分ゼロ]現場ルポ

「ペットショップでお金を出して買うのではなく、保護犬・保護猫をお迎えする選択肢があることを知ってほしい」とティアハイム・コクア代表の山田氏

 保護団体にのしかかる負担は想像を絶する。NPO法人ティアハイム・コクア代表の山田直美氏に話を聞いた。 「多頭飼育崩壊やブリーダーが崩壊して、劣悪な環境で育てられた何百という犬や猫が路頭に迷い、行政から『なんとか一頭でも引き取ってもらえないか』と連絡がくる。人に慣れている子は譲渡対象になりやすいのですが、動物愛護センターや保健所の職員に『扱いにくい』と判断されてしまうと、処分の対象にされてしまいます。難しいところですが、その判断基準が曖昧な部分もあります」  また、「ぺットショップより安いから」と、横流し屋などから購入してしまう無知な人々も後を絶たない。これも問題を複雑化させる一因だ。 「相場よりかなり高額な譲渡代を取ったり、高いフードや保険をパッケージで購入させるなど、悪質な団体も存在します。需要があるから生体販売ビジネスが成り立ってしまう。そして繁殖を繰り返して、崩壊し、結果的に多くの犬猫が生きる場所を失う。無責任にペットを捨てる人に、ペナルティがないのも大問題です」(山田氏)  無意識に“殺処分ゼロ”を脅かしていないか。現場の努力を踏みにじっていないか。いま一度立ち止まって考えてみてほしい。 取材・文/週刊SPA!編集部
1
2
3
おすすめ記事
ハッシュタグ