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「兄からの暴力で血だらけに…」“家族全員が精神を病んでいる環境”で育った作家が伝えたいこと

“親ガチャ”という言葉が普及していく先に

吉川ばんび

吉川ばんびさん

 吉川さんは今風に言うと「親ガチャを外した」わけだが、親ガチャという言葉の普及はストレスが日常的に存在している家族状態を指す“機能不全家族”の深刻さを弱める可能性もある。親ガチャを外した当事者としては、親ガチャという言葉が定着している現状をどのように見ているのか。 「家庭内暴力って当事者でなければ関心を持ちにくいんです。やはり機能不全家族や虐待問題と取り上げるとどうしても壁ができてしまい、興味までつながりません。ただ、親ガチャという言葉が広まったことで、家庭内暴力を考えるハードルは下がったように思います。  また、家庭環境は比較することが難しく、『家族から殴られるのは当たり前』と思い込んでいる人も珍しくありません。むしろ親ガチャという使い勝手の良い言葉が普及すれば、自分自身の家族が一般的ではない、という気付きにつながり、SOSを出す第一歩になります

家庭内には第三者の目が向かないからこそ…

 次に家庭内暴力、機能不全家族を無くすためにはどういったことが必要になるのか。吉川さんは「それらの原因は第三者の目が家庭に入らないことは大きいです。そういった法律がないため、警察ですら『家庭の問題は家庭で解決してください』と取り合ってくれません」と主張する。 「海外の学校ではメンターやカウンセラーがいて、親や教師以外に頼れる大人が傍にいます。一方、日本では家庭内暴力について学校では教えてくれません。家庭内の問題に踏み込むケースは稀で、なかなか問題視されにくかったりして。  以前よりも親から子供への虐待は注目されるようになりました。しかし、私のように兄妹間での暴力は“きょうだいげんか”と括られ、軽く扱われています。さらには、子供から親への暴力も軽視されがち。家庭内暴力と聞くと、“親から子供へ”とイメージされやすいですが、この認識を改めて議論されなければいけません
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“きょうだいげんか”で済まされない現実
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フリーライター。主に政治経済、社会問題に関する記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている。Twitter:@mochizukiyuuki

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