エンタメ

「横浜レゲエ祭」主催、レゲエ世界チャンプが明かす“ビジネスで成功するための秘訣”3選/MASTA SIMON(MIGHTY CROWN)インタビュー

③いい意味でバカな挑戦を続ける

横浜レゲエ祭

1995年の第1回「横浜レゲエ祭」(横浜レゲエバッシュ)のフライヤー ※提供写真

 MIGHTY CROWNは音楽イベント「横浜レゲエ祭」を自らの主催で成功させるなど、巨大なイベント運営にも関わってきた。  小さなクラブハウスではじめた横浜レゲエ祭が、屋外に出て1万人規模のイベントになった際は、「失敗してもメンバー全員でマグロ漁船に乗れば何とかなる!」と考えていたそうだが、今回の『FAR EAST REGGAE CRUISE』は「マグロ漁船に乗ってもどうにもならないレベル」の予算規模だという。 「自分の持っている時間とカネと、あらゆるものを突っ込んでも足りない規模の金額がかかってるからね。クルーズ船のビジネスはそれだけで大きなものだけど、俺らはそこにアーティストを呼んで、スタッフだステージだと色んなコストをさらにかけてるわけだから」  今回のクルーズで使用される「MSCベリッシマ」は乗客定員 4500人の豪華客船。そこで50組を超えるアーティストがステージを行うが、この巨大イベントの運営の中核を担うのは、MIGHTY CROWNの事務所スタッフや海外マネージャーなど5~6人だという。失敗したときのリスクも巨大すぎるイベントを開催することに恐れはなかったのだろうか。 「はじめたときの感覚は『これ成功したらヤバくない?』っていう楽しみのほうが大きくて、正直なところ数字は何も見てなかった(笑)。あとから数字を確認して、『これ、失敗したらどうなるの……?』って不安は俺らのチームにも出てきたけど、俺は成功しか見ていなかった。  もちろん失敗した場合のことも一応考えて、チームのみんなには『最悪、俺が借金をかぶれば他の人に迷惑はかからないから!』って伝えたけどね。あとは裏方で関わってくれる外部の人たちも含め、自分たちのチームを信じ続けて、開催まで頑張るだけだった」 MASTA SIMON『FAR EAST REGGAE CRUISE』は一度は新型コロナウイルスの影響で1年間の延期となったが、「開催が1ヶ月を切ったぐらいになってやっと光が見えてきて、今はヤバいパーティができる楽しみが大きい」とのこと。このクルーズの開催は人生をかけた大勝負だったが、SIMON氏は過去にも横浜レゲエ祭を屋外化・大型化するなど、同じような大バクチを何度も打ってきた。 「俺はMIGHTY CROWNの事務所の社長を21年やってきたけど、正直ビジネスが上手い人間かというと、決してそうじゃないと思う。でも、いろんな業種の凄い経営者の人達と会ってきて、自分も共通するものを持っているなと思えたものが一つだけある。それは、『いい意味でバカ』ってこと。周囲のみんなが驚いたり反対したりするような、『これが実現したら面白いよね』ってアイデアを実行しちゃう人が多いんだよね」  MIGHTY CROWNは「日本人がサウンドクラッシュで世界一になる」「自分たちの主催イベントで横浜スタジアムを満員にする」という偉業を達成してきたが、それも「いい意味でバカ」といえる無謀なチャレンジを繰り返してきたからこそ、ともいえる。

大事なのは打席を増やすこと

MASTA SIMON「それは野球で例えれば、バッターボックスに多く立ってきたということ。打数が増えれば増えるほど経験も積めるし、ヒットやホームランの数は上がるんだよね。だから一番ダメだと思うのは、試合に出ずにバッターボックスに立たないことだと思う」  MIGHTY CROWNは今回のクルーズを最後の舞台に、サウンドシステムとしての音楽活動を休止する。なおMIGHTY CROWNは過去にも、毎年の恒例行事で大きな集客もあった「横浜レゲエ祭」の開催を休止するなど、「まだ続けられる状態でも、あえて辞めて次のことをする」という決断を続けてきた。そうやって「辞め時」をいち早く決断できる秘訣は一体何なのだろうか。 「そこまで深く考えてるわけじゃなくて、何となくの感覚というか、心の声に従った結果なんだよね。『そろそろ別のことをしたほうが気持ちを切り替えられそうだな』と感じたときは、今までのことを辞めて新しい挑戦をしてきたし、そうやって物事を切り替えていく感覚は、俺と弟のSAMI-Tでは共通する部分があるんだと思う。  もちろん人の意見を聞いてもいいんだけど、人に意見を聞くときって、『やっぱり合ってたんだ、俺』って確認をして、自分の決断の後押しをしてほしいだけなんだよね。何かをやりたいときも辞めたいときも、その答えは心の中のどこかに絶対あるはずだから、それを探ってみるのが大切だと思う」
MIGHTY CROWN

写真左から、MASTA SIMON、SAMI-T、COJIE、NINJA ※提供写真

MIGHTY CROWN】 1991年横浜で結成されたレゲエサウンド。「横浜レゲエ祭」のプロデュースや、サウンドクラッシュという音のバトルで世界8タイトルを保有するなど、日本代表のみならず世界のレゲエアンバサダー/カルチャーアイコンとして活躍。 <取材・文/古澤誠一郎、撮影/藤巻祐介、編集/藤井厚年>
1
2
3
世界サウンドクラッシュ紀行

ジャマイカ、ニューヨーク、カリブの島々――。9割が黒人のレゲエ界で前人未到の景色を切り拓いてきた“世界のマイティークラウン”が、世界40か国200都市でのヤバい体験と、道なき道を切り開いた活動遍歴を書き尽くした1冊。
おすすめ記事
ハッシュタグ