更新日:2023年09月04日 18:36
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「外国人はどう読む?」日経新聞現役デスクが教える「情報の読み方で勝つ」方法

市場の体温計に要注目!

 最後に「マーケットデータ面」。この面には記事はなく、市場に関するデータだけが掲載されている。まず見ておきたいのは左上の「市場体温計」のコーナー。ここには日経平均株価と東証株価指数(TOPIX)の終値のほか、売買代金・売買高、値上がり・値下がり銘柄数、東証プライム市場の時価総額などがまとめられている。 「体温計」の名前の通り、これらのデータは株式市場の盛り上がり具合を示す。例えば、東証プライムの売買代金は3兆円が活況の目安とされている。毎日見続けていると「きのうの相場はこんな雰囲気だったんだな」ということが次第にわかるようになってくる。  右上の投資指標のコーナーには、日経平均採用銘柄などのPER(株価収益率)、PBR(株価純資産倍率)、平均配当利回りが掲載されている。これらの値を自分が投資している(しようとしている)銘柄と比較することで、指標面で割安か割高か、配当利回りが高いか低いかを簡単に知ることができる。  このほかにも業種別日経平均の騰落率や、東証プライムの値上がり率・値下がり率ランキングなど、面白いデータが大量に掲載されているので、隅々まで眺めて気になったデータがあれば定点観測してみるのもいいだろう。  これらの面に加えて、余裕があれば読んでおきたいのが「グローバル市場面」や「マーケット商品面」、「ビジネス面」だ。グローバル市場面は海外投資家の動き、マーケット商品面は鉄や原油など原材料価格の値動き、ビジネス面は新工場の建設や社長交代などに注目してみると、それぞれ意外なところで投資のヒントを見つけられるにちがいない。

日経新聞の表現で「外国人の思惑」を考える

 4月以降、日経平均が上昇していく局面では「外国人主導の株高」という表現が日経新聞でもよく使われた。この表現には裏付けがある。  7月7日の日経新聞朝刊には「個人投資家、日本株離れに歯止め」という記事が掲載された。見出しはそうなっているのだが、実際に記事の中身を読むと日本株の保有比率は外国人が30.1%と最も多く、個人の比率は17.6%にすぎない。  この記事は東京証券取引所などが発表した2022年度の「株主分布状況調査」を元にしていて、しばらく下がり続けていた個人の比率が上昇に転じたので「歯止め」としているわけだが、依然として東京株式市場における外国人の占めるシェアは大きいというのが現状だ。  そういうわけで、日本株に関する記事やニュースを目にしたら「外国人投資家はどう考えるだろう」と考える癖をつけるようにしたい。外国人は基本的に日本人より日本の商習慣や文化、社会に詳しくない。そのため、私たちが考えるよりも単純化した枠組みで記事やニュースをとらえて、投資に対する判断を下すと考えられるためだ。  例えば円安・ドル高が進んだとする。私たち日本人は輸入品が高くなったり、海外旅行に行きにくくなったりするマイナス面を考えがちだが、外国人投資家は自動車メーカーや電機メーカーの利益が増える=日本株にプラスと単純に考える。  実際に日系自動車メーカーの海外生産が相当進んでいるし、メードインジャパンの電機メーカーも弱くなっているので、円安は単純に日本経済にプラスとは言い切れないのだが、未だに外国人投資家の間で日本株といえば「トヨタ」「ソニー」の印象が強い。そのため「円安=株高」という鉄板の方程式が成り立っているのだ。  実は、日本の大企業の目線も「そちら」を向いている。トヨタ自動車の豊田章男会長が電気自動車(EV)を、ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長が人工知能(AI)を、それぞれ語る姿をイメージしてほしい。ちょっとオーバーアクションで、私たち日本人からすると芝居がかったような話し方が思い浮かんだはずだ。  それもそのはず、彼らの目線の先にいるのは外国人投資家だからだ。いかに外国人ウケするかを綿密に計算して練習を積んだうえで記者会見にのぞんでいる。「そんな大風呂敷を広げて、実現できるのかよ」なんて、重箱の隅をつつくような目線を向ける日本人は文字通り、眼中にない。  裏を返せば個別企業に関するニュースや発表が、どの程度投資材料になり、株価に反映されるかは「どの程度まで外国人にウケるか」次第ともいえる。実際にAI・半導体、EVといった外国人にとっても受け入れやすく、わかりやすい材料のある銘柄は株価の好調さが目立つ。個別銘柄を選別するときには「外国人目線」を心がけることで、失敗を減らせるかもしれない。 【今、無料会員になれば初月90%オフ!】⇒週刊SPA!のサブスク「MySPA!」9月スタート!無料会員登録はコチラ 取材/MySPA!特別取材班
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