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挙国一致内閣が必要だ<自民党衆議院議員・村上誠一郎>

最大のチャンスを逃した植田日銀総裁

―― いま国民が懸念しているのは、円安に伴う物価高だと思います。これによって国民生活は非常に苦しくなっています。しかし、新たに日銀総裁に就任した植田和男氏も異次元金融緩和を継続しており、円安に歯止めがかかりません。 村上 異次元金融緩和はもうとっくに役目を終えています。一刻も早く終止符を打たなければなりません。最大のチャンスは、日銀総裁が新しくなるタイミングでした。このタイミングであれば、大きな抵抗もなく異次元金融緩和を修正でき、インパクトも大きかったはずです。  ところが、日銀はこのチャンスを逃しました。植田日銀総裁はこれまで2度開かれた金融政策決定会合で、異次元金融緩和策を維持する方針を打ち出しました。本当に残念でした。  日銀が異次元金融緩和を続けているのは、金利を抑えるためだと思います。金利が上がれば国債の市場価格が下落するので、日銀が保有する国債に含み損が発生します。金利が1%上昇するだけで、日銀は債務超過に陥ってしまいます。  日本経済が破綻すれば、最悪の場合、日本はIMF(国際通貨基金)の管理下に置かれます。IMFは日本に対して厳しい債務調整を求めてくるでしょうから、当然、新規国債は発行できなくなります。  日本は毎年40兆円ほど新規国債を発行し、それが歳入全体の4割を占めているので、もし新規国債を発行できないとなれば、防衛費を含めすべての予算を4割カットしなければなりません。防衛費を倍増できるような状況ではないのです。  日銀としてはこうした事態を避けたいのでしょうが、いくら異次元金融緩和を続けたいと思っても、この政策はいずれ必ず修正を迫られます。修正が遅れれば遅れるほど、国民の痛みは大きくなります。  最近は日経平均株価がバブル景気後の最高値を更新したなどと騒がれていますが、これは別に景気が回復しているからではなく、コロナ禍対策のために世界中の国々が金融緩和や財政出動を行った結果、お金がダブつき、それが株式市場に流れ込んでいるだけの話です。過剰に行った金融緩和や財政出動の反動は、必ずやってきます。私は来年あたりに世界中の金融が大変なことになるのではないかと見ています。1929年の世界大恐慌のような状況になる危険性があります。  異次元緩和を続けていれば、その際に被るダメージも大きくなります。そのダメージをできるだけ小さくするためにも、一刻も早く異次元緩和政策をやめるべきだと思います。

与野党、民間を問わず人材を結集させる

―― 現在の自公体制では人口減少問題に対応したり、異次元の金融緩和を修正するのは難しいのではないでしょうか。政界再編も含め、新しい政治の形が必要だと思います。 村上 やるべきことははっきりしています。与野党を問わず、民間からも政策に明るい腹の座った人材を集めることです。誰が何と言おうが、なすべきことを一歩も引かずに実行できる人を結集し、最終的に挙国一致内閣をつくるしかありません。  私が若いころは三角大福中(三木武夫・田中角栄・大平正芳・福田赳夫・中曽根康弘)や安竹宮(安倍晋太郎・竹下登・宮澤喜一)がおられ、私の師匠である河本敏夫先生や梶山静六さん、後藤田正晴さん、山中貞則さんなどがいらっしゃいました。どのような状況になろうとも、先輩たちがあるべき方向に政治を引っ張ってくれていました。  しかし、いまの政界にはこうした逸材がいるでしょうか。当時を知る政治家も少なくなっています。私の当選同期は47人いましたが、いまでは4人しか残っていません。  いくら人材を結集させると言っても、凡庸な人を集めても意味がありません。水を飲みたくない馬を川に連れて行っても仕方ありません。  そこで、私はまずは現役官僚や官僚OB、官僚出身の国会議員に声をかけてみようと思っています。『文藝春秋』に財務事務次官だった矢野康治氏や元大蔵事務次官の齋藤次郎氏が寄稿していましたが、彼らのように財政や金融に明るく、現状を憂いている人は少なくないはずです。  先の戦争を見ればわかるように、もともと日本人は滝壺に落ちなければ危機がわからないところがあります。現在の日本も大変な岐路に立たされていますが、実際に危機が起こらなければ、そのことに気づけないのかもしれません。  しかし、たとえ危機に陥ってしまったとしても、今日の日本は終戦直後と違い、工場や建物などの生産基盤は残っています。万が一滝壺に落ちたとしても、そこから再起を図ることは、終戦の時と違い、決して不可能ではないと思っています。  <6月27日 構成 中村友哉 初出:月刊日本2023年8月号
げっかんにっぽん●Twitter ID=@GekkanNippon。「日本の自立と再生を目指す、闘う言論誌」を標榜する保守系オピニオン誌。「左右」という偏狭な枠組みに囚われない硬派な論調とスタンスで知られる。
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月刊日本2023年8月号

【特集】国会議員に告ぐ! 政界再編のため捨身で行動せよ
石破茂 自民党本来の理念と強さを取り戻せ
村上誠一郎 挙国一致内閣が必要だ
稲田朋美 9条2項削除こそ自民党の原点だ
福島伸享 国民を信じて捨身の行動を起こせ
小川淳也 強い野党の再建に全力を尽くす

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