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「“神物件”だと思ったのに…」暴れる高齢者、多発するボヤ騒ぎに疲弊…元住人が語った団地生活の実情

住民が自分事化しなければ再生の見込みは薄い

 とはいえ、郊外は人口減少が著しく、一筋縄ではいかない。その上で、「プラスアルファの魅力づくりのために、住民の協力が必要不可欠です」と語る。 「かつて地域に公共施設がほとんどなく、“陸の孤島”と呼ばれていた神奈川県横浜市のドリームハイツがいいモデルケースです。住民が一丸となって行政を動かし、保育園を開設したり、高齢者の見守りサービスや訪問介護事業を手がけたりしています。それでも着実に高齢化の波は押し寄せていますが、こうした活動があるだけで地域の活性が促されるため、少しでも努力していくしかありません」  結局は、高齢化が進む中で、いかに自分たちでマネジメントできるかどうかだ。 「マンションの事例ではありますが、京都府にある西京極大門ハイツでは管理組合を法人化し、20年以上前から自主管理を行っています。高齢化によって管理組合が機能していない団地も多いなか、再生維持を自分事にしていくことも大切です」  とはいえ「ほとんどの団地は廃墟となり、自然に帰すしかない」と米山氏。そうならないためにも、行政の適切な判断が待たれる。

それでも団地に住みたい!首都圏、2DK・家賃6万円の魅力

『ルポ[日本の絶望団地]』団地の例

※写真はイメージです。本文と関係ありません

 今回の企画であらゆる団地を訪れた女性記者(34歳)だが、絶望的な話を取材しながらも、1周回って住みたくなってきた。現在は文京区内の駅徒歩2分、家賃7万円の極狭物件にひとり暮らししているが、団地ならもっと安い家賃で広い部屋に住めるからだ。  20代のころ、初期費用0円の脱法シェアハウス(東中野・家賃5万円)に入居し、謎の咳が止まらなくなった経験を思い返すと、同程度の初期費用なら国が運営する団地のほうが安全だろう。  試しにUR都市再生機構の公式HPで「家賃6万円以内・30㎡以上」の条件で空室検索をすると、東京と神奈川だけでも30部屋ヒットした。たとえば、西武新宿線・花小金井駅からバス8分の滝山団地は家賃6万円の2DK(40㎡)。  寝食分離が叶うだけでなく、仕事部屋まで設えることができる。リモートワークも食事も化粧もひとつの机で強いられている現状に比べると、羨ましすぎる間取りだ。団地も条件次第ではアリかもしれない。 【住宅ジャーナリスト 榊 淳司氏】 京都府出身。分譲マンションを中心とした不動産業界に詳しい。近著に『すべてのマンションは廃墟になる』(イースト・プレス) 【住宅・土地アナリスト 米山 秀隆氏】 新潟県出身。大阪経済法科大学経済学部学部長。富士通総研などを経て現職。な著書に『限界マンション』(日経BP)など 取材・文/週刊SPA!編集部
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