玉城ティナが奇妙なインフルエンサー役に。昨今のSNSの風潮に思うことは?
14歳でモデルデビューし、俳優としても10周年を迎えた玉城ティナが、ふとしたことから狂気に染まっていくカリスマインフルエンサーに……。最新主演映画『#ミトヤマネ』が、8月25日から全国公開される。
――まず、この作品を通じて玉城さんが最も抱いた感情は何ですか?
この作品は一言で表すのがとっても難しい作品なんですけど、宮崎大祐監督のもともとのテーマとしては「イメージ」というものがどんどん分裂していく、といった感じです。
わかりやすいところで言えば、SNSの闇や怖さというものもあるのですが、その人を認識するのに「顔」って必ず無意識のうちにも頭に浮かべると思うんです。けど、そのイメージが勝手にどんどん広がって暴走してしまうっていうことに対して「面白い」って思う人もいるだろうし、「怖い」って思う人もいるだろうし。私自身はいろいろな人から撮られたり、自分のイメージというものを切り売りしていたりする仕事でもあるので……。
――イメージの独り歩きをすでに経験していると。
そうですね。ただ、そこに関しては、独り歩きであってもいいかなと。その意味では役柄に近いところもあります。ミトのように「無」かつ「衝動的」ではないですけど、わかるところはわかるんです。
――玉城さん自身は、先ほど「切り売りする仕事でもある」とおっしゃったように、自分のなかで折り合いをつけているという感じなのでしょうか。
いろいろな折り合いもつく年齢になってきたと思うし、いい意味でも悪い意味でも「距離を置く」ということを学んだというか。人から見られている「玉城ティナ」と、実際の「玉城ティナ」は距離を置くことが一番早いなって。
でも、それぞれの玉城ティナの間に「橋」はあるんですよ。だから全然別人というわけではなく。どちらかを失うともう片方のアイデンティティも失われてしまいますし、持ちつ持たれつという感じはあります。
――そんな玉城さんが今回演じたミトという役についてはいかがでしょう。
ミトはインフルエンサーという仕事を楽しんでいるように見えるといえば見えるけど、見えないといえば見えない(笑)。無自覚な強欲さはあると思いますし、だからこそ物語の後半にかけて妹のミホ(湯川ひな)が自分はミトだと名乗ることに対しての違和感だったり、それを目の前にしても特に表情は変えてないんです。怒りなのか悲しみなのかわかりませんけど、演じているときはなるべくフラットに、見た人が後からいろんな意味を付け足しても不思議じゃないように心がけました。
――確かに結末も含め、そこは人によって解釈がわかれそうですね。
どういうふうに見てもらっても構わないです。今の時代を表していると思ってもらえれば嬉しいですけど、世代によってもスタンスが変わると思いますし。「怖い」「受け入れられない」といった拒絶の感情も、それはそれで否定しません。
劇中で、なぜミトのことを好きか街の人に尋ねるシーンがあるんですが、それに対する「特に理由ないですけど」という答えも、これまで何かが好きな理由として、あまり表にでてこなかった印象です。理由もなく、突然でてきても好きなものは好き。人が信じたものを信じるというか、今はそういう価値観がより露呈しているのではないかと思います。
また、「インフルエンサーは公人だ」というセリフもあります。100%肯定するわけでないけど、近いものになっている気はします。今はみんながなりたいものになれる時代ですし。
――そういったさまざまな時代の空気感を凝縮している作品であると。
はい。もちろんこれが最新のインフルエンサー像ではありませんし、それを言いたいわけではありません。あくまでフィクションとしてのイメージを私が請け負ったと思っています。作り方としてはシンプルでコンパクトなので、どの場面から見ても楽しめる作品です。ミホがだんだん変わっていく姿も、完成した映像を見たらそこまで違和感なかったですし、その意味では体験型の映画と言えるかもしれないですね。
いい意味でも悪い意味でも「距離を置く」ことを学んだ
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